【社説】トランプ氏のものになったFRBPhoto:Anadolu/gettyimages

 ドナルド・トランプ米大統領は利下げを望んでおり、17日に米連邦公開市場委員会(FOMC)がフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%引き下げると決めたことで、彼の望みはかなえられた。FOMCは同時に、今回の利下げが米経済にどのような意味を持ち得るかについて暗黙の警告を発した。トランプ氏は今やそれについても責任を負っている。

 誘導目標レンジを4.00~4.25%とする今回の利下げはサプライズではなかった。引き下げの可能性が高いことを連邦準備制度理事会(FRB)当局者らが示唆していたためだ。しかし彼らは17日、矛盾する内容のメッセージも送った。

 今週の会合後に公表された経済見通し(SEP)で、FRB当局者は0.25%の利下げが年内にあと2回、2026年にさらに1回あると予想している。それにもかかわらず、同じ見通しの中で、インフレが予想以上に根強いことも認めている。

 FRB当局者は現在、個人消費支出(PCE)価格指数の上昇率が来年は2.6%になると予想しており、これは6月に予想した2.4%を上回る。FRBが目標とする2%のインフレ率は、2028年まで達成されない見通しだ。つまり、インフレ高止まりが見込まれるにもかかわらず、FRBは利下げを行っている。しかも、インフレ率を目標水準まで下げられないということは、組織としてFRBが対応しなければならない最大のリスクだ。

 にもかかわらず、ジェローム・パウエル議長とその同僚らは、政策の主な焦点を鈍化しつつある労働市場に移している。パウエル氏は記者会見で、今週の決定を「リスク管理のための利下げ」と表現し、雇用の伸びが低迷していることを示す証拠を強調した。

 だが、パウエル氏は金融政策の効果について明確に説明するのに苦労した。同氏が言及したマイナス要因、つまり関税とトランプ氏による移民取り締まりは、いずれも金利引き下げで埋め合わせられるものではなく、それ以外の点では「経済は悪くない」と認めた。さまざまな兆候の中でも、株価上昇や信用力の低い債券に対する投資家の強い関心は、現在の金融環境が特に引き締め状態にはなっていないことを示唆している。