ミライシフト?セルフ・プロデュース支援?…有名企業が早期退職に「妙な名前」をつける狙い写真はイメージです Photo:PIXTA

有名企業の「希望退職者募集」のネーミングが進化している。経営に余裕があるうちに人員カットに踏み切る「黒字リストラ」も踏まえて、「ネーミングの妙」を徹底的に考えてみたい。(未来調達研究所 坂口孝則)

黒字リストラにもある
「希望退職者募集」ネーミングの妙

 9月初旬、三菱電機は満53歳以上の社員を対象にした早期退職の募集を公表した。早期退職の募集や制度自体は珍しくない。ただ、このニュースが話題になったのは、同社が今期の業績で過去最高益を見込むからだ。経営に余裕があるうちに人員カットに踏み切る、いわゆる「黒字リストラ」である。

 筆者が注目したのは、早期退職募集の施策名だ。「ネクストステージ支援制度特別措置の実施について」と同社の発表にある。ネクストステージ支援制度か、うむむ、と思った。

 日本企業の際立った特徴の一つに「ネーミング戦略」があるとは薄々感じていた。日本人ならではの高度なコミュニケーションのなせる業ともいえるだろう。心理的な配慮が込められている気がしてならない。

 筆者は以前、米国人の同僚から、「VSP」という言葉を聞いて驚いたことがある。「Voluntary Separation Program」の略で、早期退職のことをいうらしい。Voluntaryっていうのがまた米国らしいではないか。あるいは「Employee Buyout」ともいうらしい。自らをバイアウトするなんて、日本人はとうてい思いつかない言い方だ。それらに比べて、さすが日本企業はオブラートに包んでいる。

 実は近年の日本企業の希望退職者募集のネーミングが、インターネット上で話題になっている。「セカンドキャリア支援制度」なんていうのはまだ素直な言い方で、「ライフシフトプラットフォーム」「セルフ・プロデュース支援制度」「希望退職プログラム ニューライフ」「社外転進支援プログラム」などなど。経営改革プラン「ミライシフトNIPPON2025」と早期退職募集が密接にリンクした例もあった。

 それにしても、「ライフシフト」「セルフ・プロデュース支援」ってのはすごい。役員会で、「うむ。実にいい表現だ」とかって決めたのだろうか……。なお上記のネーミング施策は、誰もが知る有名企業ばかりである。