中国の人気レストランチェーン「西貝」の料理(西貝公式サイトより)中国の人気レストランチェーン「西貝」の料理(西貝公式サイトより)

9月、中国のあるインフルエンサーの発言がきっかけとなり、外食業界を揺るがす大騒動が起きた。話題の中心となったのは、内モンゴル発で中国全土に店舗展開する人気レストラン「西貝」チェーン、そして焦点となったのが“調理済み食品”である。レトルト食品や冷凍食品など日本でも調理済み食品はおいしくて便利な存在だが、中国でなぜそれが問題になったのか?(フリーランスライター ふるまいよしこ)

コロナ禍の後、香港人たちはすっかり外食をしなくなった

 新型コロナウィルスの大感染は、多くの人たちの生活を変えた。特に、団地やマンション、さらに地域丸ごとの封鎖を体験した中国や香港の人たちの変わりようといったら……。

 コロナ禍の後の香港では、街角の食堂やレストランに閑古鳥が鳴いている。以前は3食どころか、午後のアフタヌーンティータイムや夜中の夜食まで、外食は普通のことだった。今や世界各地に散って暮らす香港出身者に、「香港を思う時、どんな味が一番恋しい?」と尋ねてみるといい。彼らの90%以上が「母の味」よりも、街角の飲食店の味を挙げるだろう。そんな“街の味”こそ、彼らの舌に染みついた思い出たっぷりの「香港の味」なのだ。

 そんな香港人たちが、コロナ禍以降、すっかり外食しなくなった。香港ではコロナウィルス感染期間中、レストランや食堂はテイクアウトやデリバリーのみの営業を迫られ、店舗内で食べることが禁止された。離れて暮らす家族や友人たちとレストランに集まってワイワイと騒ぎながら食事をとることが、彼らの大事な日常生活だったのに、その糸が断ち切られた。政府はコロナウィルスの規制が終われば、街の食堂に人びとが何事もなかったかのように戻ってくると思っていたようだが、その思惑は外れた。