
読者の反響が大きかった記事を再配信します。(記事初出時の公開日:2025年4月21日)
中国の家電メーカー「シャオミ」が誇る最新EV「SU7」で事故が起き、女子大生3人が命を落とした。高速道路を走行中、警告から衝突までわずか2秒。ドアが開かず、3人が中に閉じ込められたまま、クルマは炎を上げて燃え上がった……。この事故は、中国で大きな注目を集めている。EVが飛ぶように売れて、自動運転技術への期待も高い中国。「AI化、スマート化、無人化」を掲げる国家戦略の象徴として台頭してきたスマートカー業界は、これからどうなる?(フリーランスライター ふるまいよしこ)
トランプ関税騒ぎを受け、中国は輸出向け製品を国内市場に投入
トランプ米国大統領による「対等関税」の主張に始まった前代未聞の関税騒ぎは、現場担当者には申し訳ないが、追いかけて一喜一憂するにはあまりにもバカバカしい「言いたい放題」の様相を呈している。当初は「奉陪到底!」(徹底的にお付き合いしよう!)と勇ましい構えを見せた中国政府ですら、今や「もう知らんわ!」という姿勢に転じている。
中国政府はその一方で、輸出向け製品を国内市場に向けて投入すべく、アリババやJDドットコムなどの大手Eコマース企業への協力を要請している。すでに11日には、JDドットコムが今後1年間で2000億元(約4兆円)分の輸出向け製品を購入・販売すると宣言し、他の同業企業も同様の動きを見せ始めた。
しかし、いくら14億人の巨大市場とはいえ、世界向けに輸出される予定だった製品をすべて吸収するのは現実的に不可能だろう。実際、中国政府はこの関税騒ぎの直前に、パンデミック以降続く消費不振への振興策「消費促進専門アクションプラン」(以下、「アクションプラン」)を発表したばかりである。
このアクションプランは、8つの構想から庶民の消費意欲を喚起しようとするものだ。消費拡大のために、収入増大、養老・医療サービスの充実、家政サービスの発展、消費財の買い替え促進、消費生活のグレードアップ、業界・イベント支援などに向けた政策見直しが掲げられている。
このような国内消費市場に、さらにダブついた輸出向け製品を大量投入するという中国政府の戦略がどのような結果をもたらすのか注目される。
シャオミ製スマートカーが炎上、女子大生3人が死亡
そんな中、アクションプランで特に強調されていた「AI化、スマート化、無人化」グレードアップ策として大きな期待を担っていたスマートカー業界で、衝撃的な事故が発生した。
3月29日夜、湖北省から安徽省に向けて高速道路を走行していた、シャオミ製のスマートカー「SU7」が、路上の道路工事を避けそこねて中央分離帯に激突、炎上した。車には翌日安徽省で行われる公務員試験を受ける予定だった女子大生3人が乗車しており、全員が炎上する車内で命を落とした。
事故直後、運転者の女子大生の家族がSNSに「3人は事故の衝撃で開かなくなった電動ドアのせいで、車内に閉じ込められて焼き殺された。なぜシャオミは未熟な製品を販売したのだ」と投稿し、大きな注目を集めた。
XIAOMI EV ERUPTS IN FLAMES AFTER DEADLY CRASH
— Mario Nawfal (@MarioNawfal) April 1, 2025
A Xiaomi SU7 electric vehicle was involved in a deadly crash on a Chinese expressway, with local media reporting 3 fatalities.
Xiaomi confirmed the vehicle’s driver assistance system had been active less than 20 minutes before… https://t.co/cQxOcgj634 pic.twitter.com/1srmPlKmw9
シャオミのスマートカー戦略
SU7は、シャオミが昨年3月に発売したEVで、発売時から、目的地を設定すると自動運転できる機能を備えていると謳っていた。
シャオミは格安ながら高機能なスマホで成功を収め、そこからスマート家電メーカーへと急成長を遂げた企業だ。そのスマート化構想における最大の野心がこのスマートカー事業だった。近年、中国で急増した「スマートカー新勢力」と呼ばれるメーカーの中でも、最初の10万台を最速で出荷したことで話題となった。シャオミの顔である創設者の雷軍CEOは、発表時に予約を入れた人々の6割が長年のシャオミファンであり、それを「シャオミに向けられた厚い信頼の証だ」と評していた。
現在、SU7にはスタンダード、プロ、マックス、ウルトラの4つのバージョンがあり、価格は約22万元(約430万円)から約30万元(約586万円)と「お手頃」に設定されたことも注目を集めていた。勢いに乗った雷軍CEOは、事故発生直前の3月に、年内の納車目標を30万台から35万台に引き上げることを宣言していた矢先だった。