会社を伸ばす社長、ダメにする社長、そのわずかな違いとは何か? 中小企業の経営者から厚い信頼を集める人気コンサルタント小宮一慶氏の最新刊『[増補改訂版]経営書の教科書』(ダイヤモンド社)は、その30年の経験から「成功する経営者・リーダーになるための考え方と行動」についてまとめた経営論の集大成となる本です。本連載では同書から抜粋して、経営者としての実力を高めるための「正しい努力」や「正しい信念」とは何かについて、お伝えしていきます。

人の長所を活かせる人は「積極思考」
長所を活かせる人は「積極思考」です。だから成功を得やすいのです。
ものごとにあたるときに、必ずと言っていいほど「できる」と思う面と「できない」と思える面があります。
それを積極思考の人は「できる」ほうから見て、消極思考の人は「できない」ほうから見るのです。
どんなに頭のいい人でも「できない」ほうから見ていると、できない理由ばかり考えて、結局何もできません。「できる」面から見るからこそやれるのです。
もちろん、無謀なことまで積極思考でやれと言っているのではありません。
松下幸之助さんは6割、孫正義さんは7割やれると思ったらやると言っていますが、これはもちろん主観的ですが、自身でやれると思う部分が大きければやってみるという姿勢が大切なのです。
足りない部分は熱意と努力でカバーするのです。
ここで、人の長所を活かせる人は積極思考だと述べましたが、積極思考かどうかの判断基準は「人を心から褒める」ことができるかどうかだと私は考えています。
人の良いところを見つけないと長所を活かせませんが、人の良いところを見て心から褒められる人は、もちろん長所を活かせますし、積極思考なのです。
人をけなしてばかりの人がいますが、それは人の悪い面ばかりを見ているからです。
部下でも上司でも、そして子供でも必ず良いところがあります。それを心から褒めることができる人は、積極思考だし、その良い面をうまく使える人なのです。
褒めるとおだてるは違う
ここで一つ勘違いしないでいただきたいことがあります。「褒めるとおだてるは違う」ということです。
先に、人の良いところを心から褒めると述べましたが、褒めるとは良いところを良いというのであって、ダメなところまで褒めてはいけません。それは「褒める」ではなく「おだてる」です。
「褒めて育てろ」という方もいますが、ダメなことをダメと言わないと、おだてられた本人は仕事や上司を甘く見ます。もちろん、それでは本人も伸びません。
ですから、リーダーは、良いところは良い、ダメなところはダメときちんと言えるかが大切なのです。
(本稿は『[増補改訂版]経営者の教科書 成功するリーダーになるための考え方と行動』の一部を抜粋・編集したものです)
株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO
10数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。
1957年大阪府堺市生まれ。京都大学法学部を卒業し、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。在職中の84年から2年間、米ダートマス大学タック経営大学院に留学し、MBA取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムやM&Aに携わったのち、91年、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の93年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。
94年5月からは日本福祉サービス(現セントケア・ホールディング)企画部長として在宅介護の問題に取り組む。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。2014年より、名古屋大学客員教授。
著書に『社長の教科書』『経営者の教科書』『社長の成功習慣』(以上、ダイヤモンド社)、『どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「1秒!」で財務諸表を読む方法』『図解キャッシュフロー経営』(以上、東洋経済新報社)、『図解「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書』『図解「PERって何?」という人のための投資指標の教科書』(以上、PHP研究所)等がある。著書は160冊以上。累計発行部数約405万部。