会社を伸ばす社長、ダメにする社長、そのわずかな違いとは何か? 中小企業の経営者から厚い信頼を集める人気コンサルタント小宮一慶氏の最新刊[増補改訂版]経営書の教科書』(ダイヤモンド社)は、その30年の経験から「成功する経営者・リーダーになるための考え方と行動」についてまとめた経営論の集大成となる本です。本連載では同書から抜粋して、経営者としての実力を高めるための「正しい努力」や「正しい信念」とは何かについて、お伝えしていきます。

「凡庸なリーダー」は部下に短所を改善するようアドバイスするが、「できるリーダー」はどうするか?Photo: Adobe Stock

会社、人材が持っている「長所を活かす」

 ここからは「方向づけ」に次いで、経営の二つ目の要素である「資源の最適配分」について説明しましょう。

 正しい方向づけを行うに際しても、資源(ヒト、モノ、カネなど)を最適に配分することが重要なことは、言うまでもありません。

 資源を最適に配分するのに、まず大切なことは、「長所を活かす」ということです。

 例えば、私のお客さまの中には、日本にもそれほどない4千トンプレスを保有しているメーカーがあります。車のボンネットなどを一発で打ち抜けます。千トンプレス4台とはできることが違うのです。

 4千トンプレスを持っている利点を活かすためには、受注や製造工程の工夫をしなければなりません。

働く人の長所を活かす工夫とは

 資金が潤沢にある会社なら、それを利用して新たな設備投資、M&A(合併・買収)、拠点の拡充、あるいは人員のレベルアップを図ることができます。

 お金のない会社と同じことをしていては、長所を活かすことができないのです。

 そして、働く人の長所を活かすことも重要です。

 後でも詳しくお話ししますが、私も皆さんも必ず良いところと悪いところがあります。それをきちっと見極めて、その長所を活かすことを考えるのです。

 もちろん、悪い点は改善が必要かもしれませんが、悪いところを改善しても「普通」になるだけです。

 会社もそうですが、普通ではだれも評価しません。

 会社も人も長所を活かし、さらにそれを伸ばすとともに、チームで各人の短所をカバーすることが必要なのです。

 それが組織をより強くします。

 例えば、営業はすごく得意だけど報告書を書くのは苦手という人は結構いるものです。凡庸なリーダーなら、その人に対して「○○さんに習って、報告書をきちんと書くように」とアドバイスするかもしれません。

 しかし、できるリーダーなら、営業は得意だけど報告書を書くのは苦手という人と、逆に営業は不得手だけど文章作成はうまいという人を組ませるようにします。

 ひとりだと、自分の弱点はカバーできませんが、チームというのはお互いの長所を活かせるように、短所をカバーしあうことができるのです。

 いずれにしても、資源の最適配分の最初のステップは「長所を活かす」ということです。

(本稿は[増補改訂版]経営者の教科書 成功するリーダーになるための考え方と行動の一部を抜粋・編集したものです)

小宮一慶(こみや・かずよし)
株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO
10数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。
1957年大阪府堺市生まれ。京都大学法学部を卒業し、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。在職中の84年から2年間、米ダートマス大学タック経営大学院に留学し、MBA取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムやM&Aに携わったのち、91年、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の93年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。
94年5月からは日本福祉サービス(現セントケア・ホールディング)企画部長として在宅介護の問題に取り組む。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。2014年より、名古屋大学客員教授。
著書に『社長の教科書』『経営者の教科書』『社長の成功習慣』(以上、ダイヤモンド社)、『どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「1秒!」で財務諸表を読む方法』『図解キャッシュフロー経営』(以上、東洋経済新報社)、『図解「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書』『図解「PERって何?」という人のための投資指標の教科書』(以上、PHP研究所)等がある。著書は160冊以上。累計発行部数約405万部。