「子育てに疲れる」「子どもの将来に不安を感じる」「子どもを愛するよりも完璧な親になることを優先してしまう」「それが間違っているとわかっているのに、他の家族に合わせてしまう」など、子育てに苦悩する親は数多くいます。そんな親たちが考えを変え、行動を変えた育児療法がいま、話題に。アメリカで20年以上親子と向き合ってきた医師による医療現場の専門的な知識をもとにした新刊『ジョンズ・ホプキンス大学児童精神科医が教える 育児の本質』より、実用的で誰もが取り組めるシンプルかつ具体的な子育て法を紹介していきます。

大人の決めた「現実」から抜け出そう
多くの親が、自分たちが勉強していた1980年代、90年代、または2000年代のやり方で子どもたちを教育しています。それは決して賢明なやり方ではありません。自分のやり方が適切でないことを知りながら、やめられない人もいます。原因は「不安」です。よその子たちは入試メインの私教育を受けているのに、我が子だけ別のことをしていると後れを取る気がして不安になるのです。周りは1日10時間以上勉強しているのに、我が子だけ何時間も遊んでいたら、いわゆる「落ちこぼれ」になりそうで怖いのです。その不安に多くの親が侵食され、そしてこう言います。
「こうするしかないんです。入試教育をしないわけにはいきません。これが現実なんです」
アメリカの大学にいると、韓国からの留学生と接する機会も非常に多いものです。韓国でいわゆるエリートコースを歩み、アメリカ有数の大学に修士課程を学びにくる人がほとんどです。韓国で受けた高度な入試訓練のおかげで、学業の成績はそこそこよいのですが、アメリカで就職に成功することは珍しく、たとえ就職できてもリーダーシップを発揮できる職責に就くことはもっとまれです。
もちろん、韓国に帰って仕事をすると決めている人もいると思いますが、世界の舞台でより成長するために必要な才能が十分に育っていないケースもよく見られます。
私は姪に「こういう職に就きなさい。この仕事はやめなさい」と言う代わりに、「あなたたちが何をするにしても、常に世界を舞台に考えてほしい」と言っています。ベーカリーやアパレルショップ、税理士でも何でも、やるなら世界に出ることを考えるようすすめています。世界に出ればチャンスも増え、より大きな成長を望めるはずだからです。
そのためには、親からまず思考の枠を取り払い、視野を広げる必要があります。親自身が、より広い未来を見据え、世界に目を向けてほしいのです。今は勉強を頑張っていい大学に入れば完ぺきであるように見えるかもしれませんが、それすら虚像であることが認識され始めています。世界に馴染めない大人に育ったら、それこそ子どもの人生の幅を狭めることになります。
(本原稿は、『ジョンズ・ホプキンス大学児童精神科医が教える 育児の本質』からの抜粋です)