「子育てに疲れる」「子どもの将来に不安を感じる」「子どもを愛するよりも完璧な親になることを優先してしまう」「それが間違っているとわかっているのに、他の家族に合わせてしまう」など、子育てに苦悩する親は数多くいます。そんな親たちが考えを変え、行動を変えた育児療法がいま、話題に。アメリカで20年以上親子と向き合ってきた医師による医療現場の専門的な知識をもとにした新刊『ジョンズ・ホプキンス大学児童精神科医が教える 育児の本質』より、実用的で誰もが取り組めるシンプルかつ具体的な子育て法を紹介していきます。

不安な感情をコントロールする療法
イライラ、強引、聞き分けのなさ、わがまま……。子どもがそうなると、親はどっと疲れます。子どもがとても小さいうちは、反応し共感することが何よりも重要です。しかし、子どもが少し大きくなって自己調整力を身につけたなら、反応と共感のほかにもう1つ必要です。
子どもによって苦手なことはあると思います。とても嫌がることや怖がること、これだけは絶対にしないとか、こうじゃなきゃ嫌だと言って聞かないことがあるでしょう。それらすべてに耳を傾けることもできません。これは児童精神科で学んだ大事な考え方ですが、子どもたちの情緒を健やかに発達させるためには、満足感(gratification)と挫折感(frustration)の2つをバランスよく経験させる必要があります。
まず、挫折のない人生はなく、挫折を経て再び立ち上がることも学ぶので、挫折感の扱い方を教えなければなりません。親は子どもが挫折すると、その挫折感をすぐさま取り除いてあげたいという保護本能を感じます。ですが、毎回親がそうしていると、子どもは挫折感の扱い方を覚えられません。そのため、「あれが食べたいのに、もらえなくて悲しくなっちゃったんだね」と反応し、「それでも5分は待ってね」と声かけをします。このとき、子どもは挫折感を感じますが、その挫折感を自分で扱う術も学びます。
子どもたちは今は大丈夫ではないように見えても、ほとんどが発達する中で落ち着いていきます。もちろん個人差があり、自分の子はほかの子よりも成長が遅いように感じられるかもしれません。それでも、子どもたちは成長し続けます。
ですからあまり戸惑ったり、不安に駆られたりする必要はありません。徐々に、成長していけばきっとよくなると思いましょう。子どもたちを教え、勇気を与え、自ら子どもの手本になれば、いつか必ず子どもは成長します。少し大変ではありますが、忍耐力を持って基本原則を守ることに専念しましょう。
(本原稿は、『ジョンズ・ホプキンス大学児童精神科医が教える 育児の本質』からの抜粋です)