「子育てに疲れる」「子どもの将来に不安を感じる」「子どもを愛するよりも完璧な親になることを優先してしまう」「それが間違っているとわかっているのに、他の家族に合わせてしまう」など、子育てに苦悩する親は数多くいます。そんな親たちが考えを変え、行動を変えた育児療法がいま、話題に。アメリカで20年以上親子と向き合ってきた医師による医療現場の専門的な知識をもとにした新刊『ジョンズ・ホプキンス大学児童精神科医が教える 育児の本質』より、実用的で誰もが取り組めるシンプルかつ具体的な子育て法を紹介していきます。

子どもから見て、幸せな大人になっているか
みなさんは、子どもから見て幸せな母親、幸せな父親ですか?
大人になったらこんな人になりたいと、子どもが思える人ですか?
自分の人生などなく、いつも子どものことで戦々恐々としている親の姿を見ながら育った子どもが、「自分も両親のような親になりたい」と思うことはあまりないのではないでしょうか。
逆に、「自分の両親のような親にはなりたくない」という声はよく聞かれます。特に親のつきっきりの子育てで育った人は、よりその気持ちが強くなる傾向にあります。
「自分はお母さんのようになりたくない。それが親の役目と言うなら、自分は親になりたくない」
先日、アメリカに住んでいる友人たちに会い、私が韓国で行なっている講演について話したときのことです。
「韓国で評判の子育てに関する講演や育児本は、どうすれば子どもを賢く、勉強ができる子に育てられるのか、子どもを名門大学に進学させるために何をすべきかといった質問に答える類のものが多い。けれども、私の講演ではその反対のことを伝えているの。親の役目はそんなことではない。子育ての本質は子どもを愛し、子どもが生きていくうえで必要な価値を示し教えることだ」と言うと、友人のひとりが言いました。
「その講演の評判はいいの?」
「ええ、とてもいいわ。親たちは、本当はこういう話を聞きたかったのだと思う」
「それはどうして?」
すると、別の友人が言いました。
「きっと、今の若い親たちは昔のやり方で育てられているから、いざ大人になってみて、親にこうしろああしろと言われてきたことが、実際の自分の人生にまるで役立っていないことに気づいたんじゃないかしら? それに、自分もそんな親になって繰り返すのが嫌なんじゃないかな?」
私もそう思います。今の30代の親たちは、親の犠牲とつきっきりの子育てを身をもって経験したど真ん中の世代です。親も自分も多くを犠牲にしてここまでやってきたのに、幸福度が低いというまさにその世代に当たります。
親のあなたは、子どもが将来なりたいと思う理想の親像になれているでしょうか? それに、いい親像とはどんな姿を言うのでしょう? 答えは簡単です。「自分の人生を、独立的かつ自主的に生きる大人」です。
自分の人生を自分の力で切り拓き、幸せに生きる様を見せるだけでいいのです。子どもになってほしい大人像を、親が見せること。それは決して、自分を犠牲にして子どもに捧げる大人の姿ではないことを、しっかりと胸に刻んでください。
(本原稿は、『ジョンズ・ホプキンス大学児童精神科医が教える 育児の本質』からの抜粋です)