「あの時売らなければ3倍に…」ベテラン投資家も逃した“大化け株”に現れるヤバい兆しとは?
ベストセラーとなっている『5年で1億貯める株式投資 給料に手をつけず爆速でお金を増やす4つの投資法』の著者・kenmoさんと、新刊『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略」』の著者・宇根尚秀さんによる特別対談をお送りする。新NISA(少額投資非課税制度)で、大人気の「オルカン(eMAXIS Slim全世界株式<オール・カントリー>)」「S&P500(米国株式)」に連動する投資信託を始めた多くの個人投資家に、次の一手となる個別株投資を指南。個人投資家とファンドマネージャーによる「ここでしか語れない話」を繰り広げる。

株価が2倍、3倍になる成長株投資…その「兆し」の見つけ方Photo: Adobe Stock

失われていく…“若い感性”と成長株のサイン

宇根尚秀(以下、宇根)「成長株投資」についてお尋ねします。kenmoさんの著書『5年で1億貯める株式投資』を読んで、2倍、3倍に成長する株のサインについて様々なヒントをいただきましたが、改めてどのような「兆し」や「きっかけ」から将来性を見出していらっしゃるのか、教えていただけますでしょうか。

株価が2倍、3倍になる成長株投資…その「兆し」の見つけ方宇根尚秀(うね・なおひで)
1975年生まれ。インベストメントLab代表取締役。1998年東京大学工学部化学システム工学科卒業。2000年東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻修士課程修了。同年ゴールドマン・サックス証券入社。エクイティ部門デリバティブトレーディング部でアジア地区のトレーディングチームを率いる。2009年同マネージングディレクター就任。2015年200兆円超を運用する世界最大級の機関投資家、ゆうちょ銀行市場部門執行役員を経て、2016年同行市場部門戦略投資部執行役員部長として投資戦略改革に参画。運用企画・投資資産配分・人材採用を含む組織体制の整備に深く関与。2018年から同行市場部門常務執行役員・経営会議メンバーとして組織全体の経営・世界中のファンドの投資選定に関与。2019年JP インベストメント最高執行責任者(COO)兼務。早稲田大学ファイナンス学科修士課程(MBA)修了。人生の折り返し地点をすぎた2020年に残りの職業人生において自分の経験と知識を活かして社会課題解決に貢献するべく起業。現在ベンチャー投資をするベンチャーキャピタルと上場株に投資をする上場株ファンドを運営している。初の著書『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略」』(ダイヤモンド社)を刊行。

kenmo これについては、年を取るにつれて、だんだん投資の感覚が鈍ってくるな、という実感があるんです。私は40代前半ですが、10代、20代の若い世代が持つセンスは馬鹿にできないな、と痛感しています。

振り返ってみると、私自身が10代や20代の頃に「これは伸びる」と直感したものは、割と正しかったんです。例えば、2012年頃に注目していた東映アニメーション(4816)は、実際に大きく成長しましたし、ジンズホールディングス(3046)が急成長した時も、その感覚は合っていました。

ところが、40代になった今、「これが伸びる」と思った感覚は、大体間違っているなと感じることが増えました(苦笑)。その原因は、これまでの成功体験や過去の常識が頭にあって、どうしても「これまでの延長線上」で物事を考えてしまうからだと思います。

一方で、若い人たちは、そういった固定観念からブレイクスルーを起こします。既存の枠組みにはなかった全く新しいものを生み出し、それが「いいね」と爆発的な人気につながっていく。そうした潮流の初動に、いち早くベットできるのが彼らの強みです。

最近の例で言うと、中国玩具大手・泡泡瑪特国際集団(ポップマート)のキャラクター「ラブブ」が、日本を含め世界的な大ヒットになっています。私はこの波に全く乗れませんでした……。でも、ブームに乗れた人たちは、莫大な利益を得たわけです。

そうした変化に気づけない自分、乗れない自分というものを自覚し、年齢の限界のようなものを感じています。ですから最近は、意識的に若い人たちや女性など、新しい感性を持つ方々に素直に教えを乞うようにしています。なかなか難しいことではありますが。

BtoCの“ホームラン”を逃す一方
BtoBでは勝機が!

宇根 特にBtoC(消費者向け)ビジネスの爆発力を見抜くのは難しいですよね。

kenmo そうなんです。BtoCは本当に難しい。ヒットは打てても、昔のようにホームランが打てなくなった、という感覚があります。

株価が2倍、3倍になる成長株投資…その「兆し」の見つけ方kenmo(湘南投資勉強会)
1982年愛知県生まれ。大阪大学大学院情報科学研究科修了後、東証一部(現・東証プライム)上場のメーカーに研究員として就職。2011年に4年間で貯めた元手300万円から株式投資を始め、追加資金の投入なしに、会社員を続けながらわずか5年で資産1億円を達成。現在は、約3億円を運用している。2018年個人投資家同士の情報交換を目的とした「湘南投資勉強会」を設立。2023年に中小企業診断士の資格を取得。15年間勤めた会社を辞め、IR支援や企業コンサルティングを行うための法人を設立。現在は株式投資のかたわら、講演活動や、数多くの企業のIR説明会を主催している。『ダイヤモンドZAi』『日経マネー』『日経ヴェリタス』『日本経済新聞』などでの記事掲載多数。初の著書『5年で1億貯める株式投資 給料に手をつけず爆速でお金を増やす4つの投資法』(ダイヤモンド社)が17万部突破のベストセラーとなり話題に。X:kenmo@湘南投資勉強会3.1万フォロワー YouTube:湘南投資勉強会オンライン チャンネル登録者数1.85万人

ただその一方で、BtoB(法人向け)の分野は、逆に年齢を重ねるにつれて得意になってきました。経験を通じてビジネスモデルへの理解が深まりましたし、業界の中で「今何が流行っているか」といった情報を掴みやすくなったからです。

投資家仲間の「いいね!」は危険信号?
あえて“ダメ出し”を求める理由

kenmo そしてもう一つ、成長株投資で重要なのは、「多数派がまだ気づいていないものにベットする」ということだと考えています。

私はよく、夜に個人投資家仲間とクローズドな勉強会や情報交換会をZoomで行うのですが、そこで面白い法則があることに気づきました。ある銘柄の話をした時に、参加者から「ああ、この銘柄は良いよね」といったポジティブな反応が多く返ってくる時は、大体うまくいきません(笑)

逆に、「その理屈はおかしい」「こういう理由でダメだろう」といった“ダメ出し”が多く来る銘柄への投資のほうが、不思議とパフォーマンスが良いことが多いのです。特に、投資が上手い人から的確なダメ出しをされる銘柄ほど、結果的に大きなリターンを生む傾向があります。ですから最近は、あえてプレゼンをして、厳しい意見をもらうことを投資判断の重要な材料にしています。

宇根 なるほど。そういう的確なフィードバックをくれるセンサーを持った人たちがいるというのは、非常に価値のあるコミュニティ資産ですね。素晴らしいです。

アイデアを磨く“壁打ち”の重要性

kenmo そうですね。ただ、それでも2倍は取れても、5倍、10倍となるような大化け株を掴みたいものですが。

宇根 実は、今朝もちょうど似たような話がありました。以前から注目していた不動産会社向けのシステムを提供している企業が、株価3倍になっていたんです。しかし私はかなり前に、リスク管理の観点から担当者に「利益確定したほうが良いのでは?」とアドバイスしてしまい、私の周りの人たちもそれに従って大半を売ってしまったんです。

結果、皆で大きな機会を逃すことになり、今朝「言うことを聞いたばかりに……」と恨み言を言われました(苦笑)。

やはり、kenmoさんのお話のように、信頼できる“壁打ち”相手がいて、様々なリアクションを見ながら「それでも自分はこう思う」とアイデアをぶつけ合うプロセスが、自身の考えを洗練させていく上で非常に重要なのかもしれませんね。最近はChatGPTを壁打ち相手にしている人もいるようですが、最新のニッチな情報となると、やはり生身の人間が集まるコミュニティの価値は大きいと感じます。