
米中の貿易対立が続く中、中国政府は、株式市場の動きを注視するドナルド・トランプ米大統領の姿勢が米国側の「アキレス腱(けん)」になるとみている。
事情に詳しい複数の関係者によれば、習近平国家主席は、米国が中国との長期にわたる貿易紛争に耐えられないと考えている。貿易戦争が激化すれば市場が急落すると確信しており、それが中国の強硬姿勢の維持につながっているという。
トランプ氏がいわゆる「解放の日」関税を4月に発表し、中国政府が報復に踏み切った際も市場が急落したため、今回も同じような展開が予想されているという。
複数の関係者によると、再び市場が急落する可能性を受け、トランプ氏が今月中に予定される習氏との首脳会談で交渉に応じざるを得なくなると中国側は予想。
中国政府は今週も強硬姿勢を維持。13日には韓国の造船大手ハンファオーシャンの米国子会社に制裁を科し、貿易摩擦を激化させている。
この措置は14日の米国市場を大きく揺さぶり、緊張緩和への期待が薄れる中で序盤に急落した。
中国は先週、消費者向け電子機器やハイテク産業に不可欠なレアアース鉱物の輸出に包括的な制限を課した。トランプ氏はこれを受け、11月1日から中国に対する100%の追加関税をちらつかせた。
米中はここ数日間、強硬発言と緊張緩和の間で揺れ動いてきたが、14日にはその姿勢がより強硬な方向に向かった。中国商務省は関税の脅威に関して、米国が「二重基準」を採用していると非難し、貿易紛争で中国は「最後まで戦う」と述べた。
一方のトランプ氏はトゥルース・ソーシャルへの投稿で、中国が米国産大豆の購入を拒否していることを理由に、米国は中国との食用油やその他の「貿易要素」での「取引終了」を検討していると表明。中国政府は米国産大豆の購入拒否について、トランプ氏の関税に対する報復だと説明している。
株式市場の動きは、行政府としての権限を積極的に行使してきたトランプ氏に対する数少ない抑制要因の一つであり続けている。
トランプ氏は自身の経済運営に関し、市場の動きをリアルタイムの指標として頻繁に活用。市場が最高値を更新すれば、同氏はソーシャルメディアでこれを拡散し、規制緩和や減税といった政権の政策の評価基準としてきた。一方で特に強気な貿易政策への反応として市場が低迷すると、方針を後退させたり、新たな取引の可能性を示唆したりする傾向がある。