
米ニューヨーク市のオフィス市場はこの20年近くで最大の活況を呈しており、米国の他の地域を大きく引き離している。
不動産サービス会社CBREグループによると、2025年1-9月期に企業が新たに賃貸したマンハッタンのオフィススペースは2320万平方フィート(約216万平方メートル)に上った。これは1-9月期の新規のオフィススペース賃貸面積としては、ここ19年で最大だ。
定期的に出社する勤務態勢に戻るニューヨークの労働者の増加から、金融業界でより現代的なオフィススペースに対する需要が高まっていることまで、さまざまな要因が重なり、オフィス市場の回復に拍車が掛かっている。会計・コンサルティング会社デロイトは、マンハッタンのウエストサイドにあるハドソンヤード地区で開発中の新しい超高層ビルの約4分の3を賃借する契約を結んだ。これは今年最大規模の賃貸借契約だ。
ハイテク、メディア、広告業界の企業も今年、オフィススペースを大幅に拡大しており、このところの勢いを継続させている。一例を挙げると、アマゾン・ドット・コムは、五番街のビルを購入したのに加え、33万平方フィートのスペースを新たに賃貸することで、ニューヨークでの同社の存在感を高めた。
ニューヨークは米国内の他地域をリードしている。25年のマンハッタンの賃貸活動は18~19年の水準を上回っている。CBREによれば、全米のオフィス賃貸は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前の平均をなお11%ほど下回っている。
マンハッタンの一等地を巡る競争があまりに激化しているため、大口テナントの多くは優れた立地と最高品質のビルのどちらを取るかの選択を迫られている。
CBREのニューヨーク地域担当リサーチディレクターを務めるマイケル・スラッタリー氏は「他の大半の都市では、家主たちがそうした問題を抱えてみたいものだと話している」と述べた。
マンハッタンの開発業者は、新たなオフィスプロジェクトを6件以上進めている。この数はパンデミック以降のどの時点よりも多い。CBREによると、25年1月以降に締結された1平方フィート当たり100ドル(約1万5100円)を超える賃貸借契約が過去最高の143件に達し、24年にこの水準で契約された総数を既に超えている。これを受けて業者は勢いづいているという。