ブロードコムのオープンAIへの賭け、高リスクな理由Photo:Justin Sullivan/gettyimages

 米半導体大手ブロードコムが米オープンAIと大量の半導体およびコンピューティングシステムの開発で合意したことは、投資家から歓迎されている。だがこれはブロードコムにとって、株価が示しているような「明確な勝利」ではない。

 この合意は、米エヌビディアや米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)といった世界最大級の人工知能(AI)半導体サプライヤーとオープンAIとの一連の合意の締めくくりとなった。これらの合意ではいずれも、数十万個のチップを備えたデータセンターにオープンAIが数十億ドルを投じることになっている。ブロードコムの株価は13日、オープンAIとの合意発表を受けて前週末比9.9%上昇した(14日は前日比3.52%安)。

 オープンAIがこれまでに合意した規模は驚くべきものだ。これらを合わせると、チップやその他のコンピューティングインフラで満たされたデータセンターの電力消費量は26ギガワット(GW)に達する。これはニューヨーク市が夏のピーク需要時に使用する電力量をはるかに上回る。それでも、同社のサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が最近、今後8年間で構築したいと従業員に語った規模の約10分の1に過ぎない。

 問題は、オープンAIがブロードコムなどと合意した金額全てをどのように支払うのかが明確でないことだ。オープンAIの今年の売上高は約130億ドル(約2兆円)と予想されている。スタートアップとしては相当な額だが、アルトマン氏の熱狂を正当化するには程遠い。同社は投資家に対し、黒字化は2029年以降との見通しを示している。

 もちろんオープンAIが期待しているのは、売上高が急激に伸び、AIチップに数千億ドルを投じるという現在の構想が数年以内に時代遅れに見えることだ。アルトマン氏が語るAIの物語は、指数関数的な成長の物語だ。そこでは、現在リスクテイクをためらう競合他社が将来的に後れを取ることになる。アルトマン氏は自身の野望の資金源となる新たなツールについて議論している。それらを実現するには、ますます多くの債務が必要になる。

 しかし、これはブロードコムにとって、リスクの高い顧客への大賭けに等しい。大きな見返りを得られる可能性もある。バーンスタイン・リサーチのアナリスト、ステーシー・ラスゴン氏は13日、今回の合意による売上高の押し上げ効果は、今後3~4年間で1000億ドルをはるかに上回ると試算した。ただし、これは賭けであり、アルトマン氏が自らの野望の完全実現に近いものを達成できるか疑問視する理由がある。