ピカチュウも、マリオも何でもあり~著作権侵害の対策が急務

 アニメ調の動画も高品質に生成できるので、色々試していたところ、実際に存在するアニメの登場人物がそのまま現れ、声まで本物の声優そっくりな動画が生成されてしまった。絶対に作品名やキャラクター名などはプロンプトに入れていないのに、である。

 プロンプトに「スケルトンの魔王」に「少年の勇者」が切りかかる、と入力したのだが、アニメ「オーバーロード」の主人公であるアインズ・ウール・ゴウンに、「この素晴らしい世界に祝福を!」の主人公である佐藤和真が切りかかるという動画が生成されてしまった。さすがに動画は掲載できないが、議論の余地なくアウトと判断できるレベルだった。

作品やキャラクター名を入れていなくても、著作権違反コンテンツが生成されてしまう可能性がある作品やキャラクター名を入れていなくても、著作権違反コンテンツが生成されてしまう可能性がある 拡大画像表示

 現在は、キャラクター名を入力すると、「このコンテンツは、サードパーティのコンテンツとの類似性に関する当社の安全基準に違反している可能性があります」と拒否されるようになっている。しかし、「転生したらスケルトンの魔王になっているというアニメのトレーラー」などと入力すれば、明らかに「オーバーロード」の映像を利用した動画が生成されてしまう。簡単なプロンプトを書くだけで、「ポケモン」のピカチュウや、「スーパーマリオブラザーズ」のマリオ、「ワンピース」のルフィといった有名キャラクターを、自分の生成した動画に登場させることができてしまう。

 この問題に対し、Sora 2はオプトアウトシステムを導入した。「著作権保護されたキャラクターを使われたくないなら、申請して」というわけだ。本来は、著作権保護はオプトアウトではなく、オプトインで行わなければならない。このような対応をとったOpenAIに対し、世界中で批判の声が上がっている。全米映画協会(MPA)も、OpenAIは即座に対処すべき、という声明を出した。

 世論の動きを受け、サム・アルトマン氏は10月4日にブログで2つの方針変更について投稿した。1つ目が、著作権所有者がキャラクター生成に対してより細かい制御を行えるようにすること。これまでのオプトインモデルに似たコントロールを提供するという。2つ目は、動画生成に関して収益化の仕組みを導入する検討している点。キャラクター生成を許可する権利者と収益をシェアするというものだ。

 著作権者にお金が流れるのはいいことだが、早めに対策しないと、被害は拡大する一方だ。今後の動向を見守りたい。

10月4日に投稿された、サム・アルトマン氏のブログ10月4日に投稿された、サム・アルトマン氏のブログ 拡大画像表示

著作権侵害には注意しつつ、高品質な動画生成を経験してみてほしい

 Sora 2は動画生成AIを次のステージに乗せた。誰もが頭の中のイメージを、いとも簡単に、現実と見まがうほどの高クオリティー映像として具現化できるようになったのだ。従来のように、大量に生成して運よくできがいい動画が生成されるまでチェリーピックする必要はない。きちんとプロンプトを入れれば、高確率で高品質の動画が得られるのだ。

 しかも、その動画を共有するプラットフォームとしての基盤も最初から用意されている。フィード内には、友人や家族など実際につながりのあるユーザーの動画が優先的に表示されるなど、SNSとしての側面もある。一気に、AI動画の民主化が広まりそうだ。

 同時に、Sora 2はかつてないほどに強力なツールなので、その分課題も山積している。著作権の問題は避けて通れない。カメオを気軽に公開して、悪いイメージのディープフェイクを作られてしまうという問題もこれから発生するだろう。

 しかし、技術の進化はもう後戻りすることはできない。社会で議論をしつつ、改善していくほかない。議論をするにも、実際に動画を生成する経験があったほうが解像度は確実に上がる。

 ユーザーとしては、著作権を侵害しないように気を付けつつも、まずはSora2を使って動画を作ってみてほしい。ここまでクオリティーが高く、しかも音声付きの動画を、こんなに手軽に生成できる時代になったのかと驚くはずだ。