持ち運び中の誤発射に注意
過失傷害の疑いで書類送検も
続いて、クマスプレーの「正しい使い方」と「注意点」も聞いた。まず、「どのようなガス容器でも年に6%ほど減圧するので、数年に1回は新規に購入し、古いもので射出する練習を必ずすること」(米田氏)という。
ただし、練習にも注意が必要だ。「発射すると約100メートル四方に、30分ほど刺激臭が充満する。その場にいる人間も、脇の下や股間、首、顔などに強烈な熱を感じる。呼吸困難とまでいかなくても、咳は止まらなくなる」そうだ。
さらなる注意点は、持ち運び中に漏れないようにすることだ。もし公共交通機関やマイカー内で誤噴射すると、関係ない人に被害がおよび大事になる。実際、過去には東海道新幹線の車内で登山客がクマスプレーを誤って噴射し、乗客5人が体調不良を訴え病院に運ばれた。誤噴射した本人は後日、「安全装置を正しく取り付けていなかった」と過失傷害の疑いで書類送検された。十分に気を付けたい。
クマよけ鈴も選ぶ際に注意が必要
地域によってラジオはNG
クマ撃退スプレーについて述べてきたが、そもそもスプレーはあくまで、クマに遭遇した時の被害を軽減するためのものだ。クマに出会う事態を未然に防ぐ方法も知っておくべきだろう。
米田氏は、「クマよけの鈴を持っておけば、動くたびに音が鳴り、人間がいることをクマに気づかせることができる。クマ側も自分の方から近寄っていくことはほぼ、ない」という。
ただし、クマよけ鈴も選ぶ際に注意が必要だという。「いわゆる梵鐘(ぼんしょう)型の鈴は『チーン』という音が鳴る。一方で、市販のクマよけ鈴の中には、『ガラガラ』と音がする商品もある。これでは音が広がらず、クマよけの効果がない」(米田氏)。
また、音でクマに人の存在を知らせるといえば、ラジオを付けっぱなしにする手もある。ところが、これは地域によっては注意が必要だ。例えば日本海側では山でタケノコ類を採るとき、リュックの置き場所を知る目的でラジオを用いる。そのため『人間はラジオとリュックを一緒に持っている』『その中には弁当が入っている』と知恵を持ったクマがいる。つまりラジオを使うと、かえってクマを誘ってしまうのだ。