米田氏がクマに襲われても撃退できた有効なスプレーを尋ねたところ、「私は『COUNTER ASSAULT』(カウンターアソールト)製のみ使ってきた」という。カウンターアソールトのクマスプレーは、米国モンタナ州で研究・開発された北米では知名度の高い商品だ。小型の消火器のような見た目をしており、レバーを押すと圧縮されたカプサイシン成分が勢いよく噴射され、その強力な刺激でクマを撃退する。

クマに9回襲われて生還した男が教える「命を救うクマ撃退スプレー」と「偽物スプレー」の決定的な違いPhoto:PIXTA

 タイプが複数あり、「『CA230』がツキノワグマ対策には適している」(米田氏)。内容量が230グラムで、レバーを押すと約9.6メートル、約7秒間噴射されるものだ。また、「ヒグマ対策には『CA290』も用意する。特に危険な現場に入るときは、これも用いる」という。こちらは内容量が290グラムで、約12メートル、約8秒間噴射されるもの。(※値はいずれもメーカー計測、無風実験下)

 米田氏が信頼するカウンターアソールト製のスプレーを今、日本で買おうとするとネット通販ではCA230が1万5000円前後、CA290は2万円前後する。商品の寸法は高さ21.5cm×直径5.9 cmなので、500ミリリットルのペットボトルくらいだ。大きさと形状からしてレバーを押す際には両手を使うことも想定される。

 一方、クマスプレーと銘打って出回っている商品の中には、手のひらサイズで、価格は数千円程度のものも並んでいる。英語の商品説明をよく読むと、「Pepper Spray」などと書いてあるだけで、「クマ」の表記が全くないものもある。噴射の距離も約5メートル程度しかない。

 カウンターアソールト製のスプレーは、米国環境保護局(EPA)製品基準を満たしたものだ。EPAによるクマスプレーの製品基準は、射程7メートル60センチ以上、噴射時間は6秒以上、内容物は225グラム以上と定められている。

 今、日本で出回っている安価で小型、ワンプッシュタイプのスプレーには、クマを撃退する効果のないニセモノも多数含まれているとみられる。クマスプレーを購入する際は、EPA基準を満たした製品を選ぶべきだろう。