ウォール街はややディフェンシブになり始めている。
8月以降で最も不安定な相場が続く中、投資家は公益株、ヘルスケア株、生活必需品株に向かっている。これらは経済情勢に関係なく確実に利益を生み出す業界だ。消費者が自動車、電話、ストリーミングサービスの購入を控えても、電力、医薬品、食料品は常に需要がある。これら三つのディフェンシブセクターは今月、2022年6月以降で初めてS&P500種株価指数をけん引する見通しだ。
投資家は債券にも避難している。10年物米国債利回りはここ3カ月で0.5ポイント近く低下し、16日には1年ぶりに4%を下回って終了した。金価格はここ1週間、過去最高値の更新を続けた。
バーンスタイン・プライベート・ウェルス・マネジメントのアレックス・チャロフ最高投資責任者(CIO)は「過去6カ月間、市場は上昇を続けながらニュースは悪化するという食い違った環境が続いていた」と述べた。
10月10日、ドナルド・トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が貿易に関する口撃を再開したことで市場が再び不安定になり、株価が急落した。主要株価指数は急速に持ち直し、S&P500種指数は現在、10月8日の最高値から1.4%以内の水準にある。
だが水面下では、投資家は景気減速に敏感な保有株から手を引いている。
地方銀行、小売業者、住宅建設業者、航空会社の株価はいずれも過去1カ月で急落した。これらの業界は経済成長期に繁栄する傾向がある。一方、自動車部品サプライヤーのファースト・ブランズと自動車ローン会社トライカラーの予想外の経営破綻は、相場の上昇が、特に債券市場のより不透明な分野で弱点や不正行為の可能性を覆い隠していたのではないかとの懸念を引き起こしている。
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は14日、同社がトライカラー関連で1億7000万ドル(約256億円)の貸倒償却を発表した後、「ゴキブリを1匹見つけたら、おそらくもっといるだろう」と述べた。
ファースト・ブランズへの主要な貸し手である投資銀行ジェフリーズ・フィナンシャル・グループの株価は過去1カ月で27%下落した。ただ17日には、ジェフリーズの幹部が投資家説明会でファースト・ブランズについて説明した後、下落幅の一部を縮小した。KKRやアポロ・グローバル・マネジメントなど主要プライベートクレジット企業も売られた。