他愛のないコミュニケーションが
大きな成果につながる
先日、会社員時代に一緒に働いていた女性と街でばったり出くわしました。思いがけない再会で、立ち話で雑談に花を咲かせていると、彼女はふとこう言いました。
「次長(当時の私の役職)はいつも、課員の好きなことを聞いていましたよね」
たしかに、私は職場では「あなたの好きなことは何?」「最近、何かいいことあった?」「これからやりたいことは何?」と誰彼となく尋ねていました。
もともと自身の興味から始めたことでしたが、職場で楽しく過ごすための工夫でもありました。「何のために会社へ行くのか?」と問われれば、多くの人は「仕事をするため」とか「お金を稼ぐため」などと答えるでしょう。
しかし、一緒に仕事をする相手の人柄や趣味・趣向、今後の目標といったことを知らないままでは、いい仕事チームにはなれません。当時の私は管理職になったばかりだったので、少し張り切り過ぎていたのかもしれません。
ただ長い目で見れば、こうした一見他愛のないコミュニケーションが、意外に大きな効果を生むのではないかと今も感じています。
思い出されるのは、私が次長に着任した直後、支社で開かれた年度初めの営業大会のことです。新任の営業部長は壇上に立つと、約400人の営業社員を前に、「売上〇億円を達成します!」と威勢のいい挨拶とともに自己紹介をしていました。実際、会場内の反応も上々で盛り上がっていました。
さて、その次に私の出番がまわってきました。支社での担当は営業ではなく、総務・人事でした。私はマイクを手に持ちこう口にしました。
「これまで所属していた人事課は総勢20人ほどでした。こんなにたくさんの皆さんと一緒に働けると思うと、友達がいっぱいできそうで嬉しいです」
場内には一瞬、白けた空気が漂いましたから、大会の雰囲気にはそぐわなかったのでしょう。「お前は小学生か!」と思った人もいたかもしれません。