友達のような関係を築けば
仕事はもっと楽しくなる

 ところが、数日後、営業部のリーダーから「この前のスピーチは面白かったよ」と声をかけられました。傍らにいた社員も「私もそう感じました」と賛同してくれたことを覚えています。

 少数でも理解してくれた人もいたのだとほっとしました。浮きすぎた発言だったかもしれないと気になっていたのです。自分が感じていた本音を率直に開示したことで、彼らとの心理的な距離が一気に縮まりました。それからは互いに打ち解けた関係になったのです。

 結局のところ、チームのメンバーが共有するべきは、業務上の情報だけではありません。「彼にはこんな面白い一面がある」とか、「あの人はこんな趣味を持っている」といった、人柄や興味を知ることもチーム作りの大切な一歩ではないでしょうか。

 各職場ではどうしても、その人の肩書や社内の立場を意識しながら相手と接することになります。だからこそ、その人の私的な顔が見えると、ぐっと距離が縮まります。

「好きなこと」「最近あったいいこと」「これからやりたいこと」の3つの質問は、極めてパーソナルな部分に触れているので、どこか子どもの無邪気さにも通じます。そのため相手との距離が近づくのです。

 結果として、こうした雑談を経た相手とは、友人のような関係が築けます。私は昔から、会社で働く最も大きなメリットは「友達を作れること」だと考えていました。定年して久しくなった今も、当時の仲間とお付き合いしているのは、その賜物でしょう。

 そのような友達に近い関係を築けた仲間と一緒に取り組む仕事の質は、間違いなく向上します。相手の意図するところが端的に理解できて、多少の無理も引き受けようという気持ちが生まれます。相手が喜ぶことをやろうという意識も働きます。

 リモートの利便性はもちろん大切なことです。ただ効率や合理性だけを求めていては職場は味気ないものになります。モニター越しにしか話したことのない相手のために、全力を尽くそうとは思わないはずです。

「好きなこと」「最近あったいいこと」「これからやりたいこと」。この3つを、名前とともに名札に書き込んで共有するだけでも職場の雰囲気はきっと変わるでしょう。社員同士だけでなく、顧客との関係においてもいい影響を与えるに違いありません。

 試しに、身近な仕事相手にこの3つのことを質問してみてください。あなたの周りにも、友達であり、仲間であり、協力者である人物が増えていくはずです。  

(構成/フリーライター 友清 哲)