結果オーライの財務相交代

 藤井前財務大臣の辞任の後を受けて、菅直人副総理が財務大臣を兼務することになった。報道によると、藤井大臣の辞任にも、後任者の決定にもある程度の裏事情がありそうだが(主に小沢幹事長との確執や同氏の意向などに関して憶測的報道がある)、結果的に国民にとって望ましい人事に至ったのではなかろうか。

 先ず、藤井財務大臣が結果的に「名誉ある撤退」の道を得たことが良かった。本連載で以前に書いたように(「『44兆円』をめぐる鳩山政権の迷走」、2009年12月17日)、藤井財務大臣の就任以来の仕事ぶりには幾つかの問題があった。

 簡単にまとめると、(1)円高を積極的に容認するかのような発言を行ったこと、(2)国債発行額44兆円への無意味な拘り、(3)マニフェストの軽視、加えて(4)財務省が予算の主導権を持つという路線を強く打ち出そうとしたこと、などだった。

 藤井前大臣のご健康が正確にどういった状態にあるのかは分からないが、トラブルによる辞任や更迭ではなく、健康問題による辞任であったことは、決断と説明が苦手な鳩山首相にボロを出させないという意味でも良かった。ねぎらいと一安心が入り交じった気持ちでだが、一国民としては藤井氏に「お疲れ様でした」と一声掛けてあげたい気持ちだ。

 後任の菅直人氏は、予算編成の過程で目立たないながらもそれなりの役割を果たしたとの評価もあるようだが、率直に言って、政権発足後の働きぶりは期待を下回るものだった。菅氏が所管する国家戦略室が予算編成の大方針を示せなかったことが、民主党の謳う「政治主導」の印象を薄いものにしたし、予算編成における財務省主導の実態を前面に押し出すことになった。あるいは、亀井郵政問題担当相による日本郵政の社長人事なども、副総理格で国家戦略担当という立場を考えると反対できたはずだ。菅氏が不活発であったことで、新政権の民主党らしさが随分後退したものになったことが否めなかった。