バブルはなぜ公然と膨らみ続けるのかPhoto:Spencer Platt/gettyimages

 誰もが人工知能(AI)バブルの話をしている。強気派にとっては、それこそがバブルなど存在しない証拠となる。その理屈は次のようなものだ。「人々が『著しく割高』と本当に思っているなら株を売り、バブルははじけているはずだ。皆それを知っているのに、どうしてバブルなんてあり得るのか」

 筆者は生来の逆張り派として、その考えを好む。大勢の中にいると落ち着かないのだ。しかし、警告する声が多ければバブルが膨らみ続けることはない、と考えるのは単純に誤りだ。歴史がそれを証明しており、心理学と金融理論がその理由を説明している。

 過熱を指摘する声が上がる中でバブルが膨張し続けた最も明白な事例はドットコムバブルだ。当時の強気派の中には、社名に「.com」を付ければ、その後1週間半で平均74%も株価が上がるのは当然だとか、企業価値をウェブサイトの「1クリック当たりの価格」で測るのは合理的だと本気で信じていた人もいたかもしれない。

 だが、バブルが起きているという非常に強い警告は枚挙にいとまがなかった。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)および他の有力紙は1999年、多くが売上高ゼロのインターネット関連企業の株価ブームをチューリップバブルや南海泡沫(ほうまつ)事件になぞらえる記事であふれていた。投機的な過熱を警告する大手ファンドマネジャーの見解もよく引用されていた。それでも株価は、バブルが崩壊する日まで上昇を続けた。

 その理由は、その会社の見込みが良いからとか、クリックがいつか売り上げに変わる日が来ると考えた人が多かったからではなく、友人が裕福になったのを目撃し、自分もそれにあやかりたいと思って株を買った人が多かったからだ。