米中首脳会談控え、安全保障を不安視するアジアPhoto:Andrew Harnik/gettyimages

 ドナルド・トランプ米大統領が1期目に世界に知らしめたのは、米国が軍事・経済両面で中国との競争激化の時代に備えていることだった。

 だが2期目初のアジア歴訪に出発したトランプ氏には、中国の習近平国家主席と新たな貿易協定を結ぶことが最優先課題となっており、同盟国の間では、彼らを犠牲にして取引を成立させるのではないかとの不安が広がっている。

「アジアの同盟国は戦略上のとばっちりを受けている」。元米外交官で米シンクタンク「民主主義防衛財団(FDD)」の中国プログラムを率いるクレイグ・シングルトン氏はこう述べた。「いま彼らの中心的関心事は、取引が得意なトランプ氏の直感が、習氏とのグランドバーゲン(包括的な取引)につながるのか、特に台湾問題を二の次にしたり、同盟国の影響力を低下させたりする取引になるのかどうかだ」

 トランプ氏のアジア歴訪は26日、マレーシアで開幕した東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の首脳会議から始まった。トランプ氏は、タイとカンボジアの国境紛争を決着させる和平協定の調印式を取り仕切った。

 次の訪問先の日本では、緊密な対米関係と日本の軍事力強化を唱える高市早苗首相と会談する。就任間もない高市氏は24日、軍事費を2年前倒しで国内総生産(GDP)比2%まで引き上げる考えを表明。トランプ氏訪日に先立ち、雰囲気を和らげる動きだ。だが日本の首相を長期間務め、退任後に暗殺された安倍晋三氏がトランプ氏と築いていたほどの確固たる関係はまだない。

 トランプ氏は3番目に、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開催される予定の韓国を訪問し、李在明(イ・ジェミョン)大統領と会談する。トランプ氏は北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記との会談に前向きだと述べている。だが米政府高官は24日、今回の予定には入っていないと記者団に語った。