会社やチームのリーダーとして、いま、求められているリーダーとはなんだろうか? 責任をとること? 部下やメンバーの話をよく聞いて、仲を深めること?
『リーダーの言語化 「あいまいな思考」を「伝わる言葉」にする方法』の著者である木暮太一氏は、リーダーの本来の役割は、どこに向かって進むべきかを「言葉で明確に伝えること」だと話す。本記事では、木暮氏に「言語化」について教えてもらう。

「部下が自分で動かない」と言うリーダーの特徴・ワースト1Photo: Adobe Stock

「自走する部下」「指示待ち部下」の差とは?

優秀なメンバーほど、リーダーの意図を汲み取り、言われなくても質の高い仕事をしてくれます。一方で、何度指示しても期待レベルに届かないメンバーもいます。

この差は能力の差ではありません。問題の本質は、コンテキスト(文脈)が共有されていないことです。

つまり、なぜその仕事をやるのか、なぜやらなければいけないのか、どこまでやれば「やった」ことになるのかの文脈が共有されているかどうかの差です。

リーダーが「なんとなく」考えているゴール、判断基準、優先順位――これらが言語化されず、メンバーに伝わっていないから、毎回細かく指示しなければならないのです

逆に言えば、コンテキストさえ共有できれば、メンバーは自律的に質の高い仕事をするようになります

コンテキストを共有する準備として、共通言語をつくる

メンバーとコンテキストを共有すれば、メンバーは自分で考えて行動できるようになります。しかしその前に、コンテキストを共有すると言っても、何についてのコンテキストなのかがわかっていなければいけません。

共有すべきコンテキストは3つです。

1. ゴール(何を目指しているか)
2. 判断基準(何を優先するか)
3. 思考プロセス(どう考えるか)

この3つが明確に言語化され、メンバーに伝われば、いちいち指示しなくてもメンバーは適切に動けるようになります。

本記事では、まず「ゴール」、特にタスクのゴール(どこまで、どのレベル感までこなせばいいか)について考えます。

ゴールの言語化と共有:「なんとなく」のゴールを「できる状態」に変換する

リーダーが「顧客満足度を高めたい」「ブランド力を強化したい」となんとなく考えていても、それをそのまま伝えては何も変わりません。

リーダーがすべきことは、自分の頭の中にある「なんとなく」を「○○が~~できる状態」に変換することです

例えば「顧客満足度を高める」という言い方があります。

しかしよくよく考えてみると、何を指しているかわかりません。もっと言えば、リーダーの頭の中でも“あいまい”なままかもしれません。

「顧客満足度を高めよう」と伝えたとき、当のリーダーの頭の中では何をイメージしているのでしょうか? それを言語化しなければいけませんね。

たとえば「既存顧客が、他社に乗り換えることなく継続利用してくれる状態」でしょうか?

もしくは「顧客が、知人に自社商品を自発的に勧めてくれる状態」でしょうか?

この「できる状態」というフレーズにまで言語化して初めて、メンバーはゴールを理解できます。