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毎年11月14日は「世界糖尿病デー」だ。国内では14日を含む9~15日の1週間を「全国糖尿病週間」とし、各地で啓発イベントが開催される。
厚生労働省の2023年患者調査によると、2型糖尿病で治療中の患者総数は363万9000人だった。好発年齢の高齢者が増えているにもかかわらず、ここ数年は横ばいに推移している。ただし、「糖尿病が強く疑われる(=糖尿病)人」で、きちんと通院している患者は全体の7~8割にとどまるため、実数はもっと多いと思われる。
ちなみに別の研究では、世界の糖尿病患者(15歳以上)の44.2%は「自分の病気に気づいていない」と推計され、また適切に診断、治療していたとしても、ちゃんと血糖をコントロールしている患者は2割にすぎない、という衝撃的な結果が示されている。
飽食とストレスの時代に生きる以上、2型糖尿病に対する危機意識は必要だ。
オーストラリアの研究グループは、米国の診断基準――空腹時血糖値が100~125mg/dL、糖負荷試験2時間後の血糖値140~199mg/dL、過去2、3ヵ月の血糖値を反映するHbA1cが5.7~6.4%で「糖尿病予備群(前糖尿病)」と診断された人たちのデータを10年分追跡し、そのまま2型糖尿病に進行するリスク因子を分析した。
対象は日本、イラン、オーストラリア、スウェーデン、スペイン、米国、ベネズエラ、メキシコで行われた集団疫学研究のデータ。年齢や性別、人種別に2型糖尿病に進行する確率と、正常血糖値に戻る確率を調べている。
その結果、追跡期間中に12.5%がそのまま2型糖尿病へ進行した一方で、その3倍の36.1%は、正常な血糖値に戻ることができた。進行リスクと関連していたのは、男性、55歳以上、人種ではラテン系で、日本人は進行率が最も低かった。そのほかのリスク因子は、2型糖尿病の家族歴、脂質異常症、高血圧症、そして肥満の存在で、特に肥満は強力な進行リスクだった。
日本人は遺伝的にインスリンの分泌能が低く、生活習慣の影響が血糖値に反映されやすい。つまり、糖尿病予備群はちょっと生活を変えるだけで、血糖値が正常に戻る可能性があるのだ。
さて、世界糖尿病デーの誓いは決まりましたね?
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)







