「1日7000歩」で死亡率が低下、糖尿病や高血圧の人は+αを【10カ国16万人データ解析】Photo:PIXTA

 先月「1日7000歩で健康効果」という新聞記事が注目されていた。

 オーストラリアなどの研究者が日、英、米など10ヵ国で行われた同種の研究からおよそ16万人分のデータを集めて解析したもので、1日に7000歩以上歩く人は2000歩の人と比べ、全ての死亡原因による全死亡率が47%低下、心血管死率は47%、全がん死率も37%、それぞれ低下したというのだ。

 病気の発症リスクとの関連では、心血管疾患リスクが25%、認知症リスクが38%、うつ病リスクが22%、それぞれ低下していた。

 研究者は「健康のために1日1万歩は歩けといわれるが、一定の歩数を超えると効果が横ばいになるため、1日7000歩を目標とするほうが現実的だ」としている。「健康日本21」(第三次)では、健康寿命の延伸と健康格差の縮小などを目的に身体活動・運動量の目標値を設定している。それによると20~64歳の成人男女の1日の目標歩数は8000歩、65歳以上は男女とも6000歩だ。

 過去10年間の日本人の運動習慣の動向をもとに設定された数値だったが、今回の研究報告でも妥当性が裏付けられたようだ。

 ただし「健康日本21」(第三次)の目標は、健康な人向けの数値。すでに心血管疾患や生活習慣病などの病歴がある場合は、再発しない、要介護にならない、病気を悪化させないための目標が立てられる。

 たとえば、2型糖尿病や高血圧の場合は1日8000歩を超えたあたりから重症化リスクが下がり始める。元々身体を動かすのが苦手な方は、普段の歩数に+1日1000歩、時間にしておよそ10分長く歩くことから始めてみよう。「病後は安静に」が定番だった脳梗塞や心筋梗塞でも、予断を許さない急性期を脱した直後から身体を動かすことが再発予防につながる。

 軽症の脳梗塞患者を対象とした国内の研究でも、病状が安定したあとは1日6000歩超のウオーキングが再発、もしくは新たな冠動脈疾患の発症を予防することが示されている。歩くことの効用は明らかなのだ。

 とはいえ残暑が続く限り無理は禁物。猛暑日は涼しい室内でのヨガや低負荷のダンベル体操がオススメである。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)