シゲルさんの姿は、まさに長年相場と向き合ってきた「投資職人」と呼ぶにふさわしいものです。このエピソードから、私たち個人投資家が学ぶべき点は非常に多くあります。

1.「得意銘柄」を持つことの圧倒的優位性

武蔵精密だけで5000回」という事実は、驚異的であると同時に、投資戦略として非常に合理的です。

一つの銘柄の値動きのクセ、出来高が増える価格帯、関連ニュースへの反応の仕方などを長年観察し続ければ、その銘柄に対する理解度は他の誰よりも深くなります。

多くの銘柄に手を出す「百貨店型」の投資も一つですが、特定の銘柄を深掘りする「専門店型」のアプローチは、売買の精度を極限まで高める一つの答えと言えるでしょう。

2.熟練は「日々の積み重ね」から生まれる

シゲルさんの「1つずつ積み重ねていくことだけ考えたらいい」という言葉は、投資の本質を突いています。板を読み、適切なタイミングで注文を出す技術は、一朝一夕で身につくものではありません。

「2240円で買い、2300円で売る」といった具体的な売買も、その銘柄の適正なレンジを肌感覚で掴んでいるからこそできる判断です。日々の値動きを追い、小さな成功と失敗を繰り返し、それを記録し続けるような地道な努力こそが、無駄のない「職人」の手つきを生み出すのです。

すぐに大きな利益を求めるのではなく、まずは自分の得意な銘柄やパターンを見つけ、日々の経験を大切に積み重ねていくことが、長期的に市場で勝ち残るための確実な一歩となります。

※本稿は、『89歳、現役トレーダー 大富豪シゲルさんの教え』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。