閉塞感の中で、長い間、生きづらさを感じていた人たちが、自らの意思で動き始めた。
その中には、職場で働いてはいるものの将来に不安を抱いていた人もいるし、地域の中でずっと埋もれていた人たちもいる。背景にあるのは、誰もが人や社会とのつながりが薄く、これまでひとりぼっちで懸命に生きてきて、相談する相手もいなかったということだ。
参加者の約半数が当事者
私が感じた「引きこもり問題の変遷」
6月2日、東京都新宿区の「新宿NPO協働推進センター」で行われた『第5回 ひきこもり問題フューチャーセッション「庵 -IORI-」』(以下、庵FS)の参加者は、50人を超えた。
そのうちのおよそ半数が「当事者」(受付での自己申告)というのは、本当に驚きである。
セッションでは、神戸や京都のひきこもり問題フューチャーセッションのディレクターともテレビ電話でつなげて、インタビュー形式で「振り返り」を報告し合った後、参加者が希望するテーマごとに分かれて、それぞれの未来を語り合った。
まず行われたのは、インタビュー形式によるゲストトークだ。
最初に私が話をした。私はこれまで15年以上、親子や支援関係の現場を見てきたが、引きこもり当事者たちを訓練して就労させようとしている状況に大きな変化がなかった。しかし、当事者たちとの話の中で、逆に周囲が当事者から学ばせてもらわなければいけないのではないかと気づかされた。そして、様々な人たちがフラットな関係の中から未来の仕組みづくりを話そうという場を引きこもり問題で設計するに至った、といういきさつを話した。
庵FSディレクターの川初慎吾さんは、兄弟に当事者がいて、20年近く社会との接点を閉ざしていることをきっかけに、これからどう生きていくかを考えるようになったという。
「性格が穏やかで、勉強もスポーツもできる。しかし、いまの引きこもり支援は、若者が対象。僕のテーマである大人の引きこもりは、セーフティーネットの谷間にある。本人たちの良さを生かして、かつ新しい働き方は、本人と家族だけでは実現できない。多様な人たちが集まってアイデアを探る場はいいなと期待して始めた」