「せっかく塾に通わせたのに、子どもが全く勉強してくれません」
新刊『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』は、東大・京大・早慶・旧帝大・GMARCHへ推薦入試で進学した学生の志望理由書1万件以上を分析し、合格者に共通する“子どもを伸ばす10の力”を明らかにした一冊です。「勉強が苦手だったり、勉強をしたくない子どもにもチャンスがある」こう語る著者は、推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏で、推薦入試に特化した教育メディア「未来図」の運営も行っています。今回は、勉強したくない子との向き合いかたについて、本書をもとに解説します。
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「つべこべ言わずに勉強しなさい」は不正解か?
「せっかく塾に通わせたのに、子どもが勉強したがらない」――中学受験を考えている家庭では、多くの親が直面する悩みです。高額な塾代を払い、将来のためにと投資しているのに、子ども本人が「勉強したくない」と言い出すと、親としては焦りや不安に襲われます。無理に机に向かわせるべきか、それとも思い切って中学受験をやめさせるべきか。正解の見えない葛藤に悩む家庭は少なくありません。
しかし、そのときに「子どもの気持ちをどう受け止めるか」で、進む未来は大きく変わります。親が強引に勉強を続けさせた結果、反発や燃え尽きに繋がることもあれば、逆に一度“競争のレール”から離れたことで、新しい興味や才能が花開くこともあるのです。
ここでは「勉強をやめたい」という子どもの声に寄り添った結果、かえって大きな成長につながったケースをご紹介します。
「勉強したくない」と主張する子ども
中学受験のために塾にも通わせていましたが、お母さんはそこで無理に続けさせるのではなく、「それなら、やりたいことを見つける方がいい」と考え直した。そして、塾を辞めて中学受験から撤退し、地元の公立中学に進学する道を選んだ。
ただし、学びへの投資をやめたわけではなかった。中学受験のために用意していた費用を使って、Aさんの興味を広げるための支援を始めた。鉄道に関心があると聞けば、鉄道図鑑や模型、体験イベントなどを積極的に取り入れた。また、短期の海外留学にも挑戦したいというので、視野を広げる経験として費用を捻出した。
すると、Aさんは次第に「ものづくり」への関心を深めていき、工学系の分野に興味を持つように。高校ではロボット制作の部活に所属し、全国規模のコンテストで入賞するまでに成長。最終的には、その実績が高く評価され、総合型選抜で第一志望の工学系大学に合格した。親御さんは「あのとき、無理に中学受験を続けさせなくてよかった」と振り返っている。
中学受験にかかる費用は、塾代・模試代・講習費・入試対策費用などを含めて、およそ300~400万円とも言われています。これは決して小さな金額ではありませんし、それだけの投資をする価値があることも確かです。近年の中学受験塾は非常に質が高く、子どもの学力を大きく伸ばすサポートをしてくれる場所でもあります。
しかし、それが「どうしても合わない」という子どももいます。興味のない勉強を無理に続けた結果、燃え尽きてしまったり、先ほどお話ししたように進学先で落ちこぼれ、ドロップアウトしてしまうケースもあるのです。
今回のケースのように、中学受験をしないという選択をしたからこそ、他の道が見えてくることもあります。教育における“正解”は一つではありません。中学受験という道に乗らなかったとしても、教育的な投資を別の形で行い、「好きなこと」「夢中になれること」に出会えるようにサポートすることで、結果的に推薦入試の世界で高く評価される力を育てることができることがあるのです。
総合型選抜入試で広がる進路
今の時代は、大学入試も一般入試一辺倒ではありません。総合型選抜や学校推薦型選抜といった仕組みが拡大し、「学力テストで高得点を取る」以外の評価軸が広がっています。探究活動や部活動、地域での取り組みなど、子どもが「好き」「やりたい」と思って取り組んだことが、むしろ入試で強みになるケースも増えているのです。
“偏差値”という物差しでは測れない、その子なりの魅力と可能性。それに気づき、信じ、伸ばしていけるかどうかが、これからの時代の子育てで問われているのではないでしょうか。
(この記事は『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』を元に作成した記事です)




