AIブーム、危うさ増す市場心理Photo:Michael M. Santiago/gettyimages

 人工知能(AI)ブームを巡り、市場には「パーフェクトでは不十分、弱さの兆しが一つでもあれば大惨事」というムードが漂っている。当たるかどうかは二の次だ。

 近頃の傾向をみると、この沈鬱(ちんうつ)なムードは長続きしそうにない。だが市場の動揺は、AIの初期段階においては、12カ月単位でリターンを測ることに慣れた投資家にとって大きな試練になるという強い警鐘となっている。

 生成AIサービスには最先端の半導体とサーバーラックを備えた巨大データセンターが必要だ。これは素早く整備できる代物ではない。主要AI企業はなお数年単位の大型投資を口にしている。

 先週はAI主要銘柄の一部が売られ、市場に動揺が走った。週明け10日は米政府機関の閉鎖が終わるとの期待感から上向いたものの、翌11日にAI関連銘柄は再び下げた。半導体大手 エヌビディア は先週7%安、11日にさらに3%安となり、時価総額は先月記録した 5兆ドル (約774兆円)を大きく下回る水準にある。

 好業績を発表した企業でさえも、このところの投資家の腹立ちを免れてはいない。米 メタ・プラットフォームズ は2週間前に堅調な7-9月期(第3四半期)決算を発表し、併せて 巨額の設備投資計画 を明らかにしたが、それ以降、株価は17%近く下落している。AI向けソフトウエアの米 パランティア は、予想PER(株価収益率)が250倍超というばかばかしい水準に達するほど急騰していたが、それでも、11月3日にまずまずの決算を発表してからほぼ8%下落した。

 AIブームの持続性を憂慮するだけの現実的な理由ももちろんある。その筆頭は、収入に比べてインフラ投資額がはるかに大きく、その差が日を追うごとに広がっている点だ。

 米オープンAIは向こう8年で1兆4000億ドルを投資する計画だが、現在の年間売上高は200億ドル前後にとどまる。投資の拡大を支えるには数年のうちに数千億ドル規模の収益を確保する必要があるが、それを実現し得る 明確なビジネスモデルはない 。