あれほど欲しかったモノを買ったのに、気づけばまた次の“欲しいもの”を探している――。その繰り返しは“脳のバグ”によって引き起こされている可能性がある。「お金の使い方」の真理に迫った世界的話題作『アート・オブ・スペンディングマネー 1度きりの人生で「お金」をどう使うべきか?』によれば、欲望に振り回される限り、人は何を手に入れても満たされないと説く。それでも私たちは“また欲しくなる”。その背景にある、脳の仕組みと幸福の本質に迫る。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

【あなたもハマってる】買って→飽きて→また欲しくなる“脳のバグ”の正体Photo: Adobe Stock

なぜ私たちは、次々に新しいモノが欲しくなるのか?

新しい服、車、家具、家電……私たちは、新しいものを手に入れるととてもワクワクする。こんなに素敵なモノを手に入れたのだから、しばらくは幸せな生活が待ち受けているに違いない! そう思い、幸せな気分に浸る。

しかし数カ月後……様子がおかしい。そのワクワクさせてくれた“何か”は、まったく日常を彩ってくれなくなっている。当初考えていた「しばらく」続くはずだった幸せは思っていた何倍も短かった。そして、また別の何かが欲しくなっている――。

私たちは、常にこうして新しいモノを求め、失われたワクワク感を埋めようとしてしまう。『アート・オブ・スペンディングマネー』では、この現象について次のように解説している。

脳が求めているのは、高級車や豪邸ではない。脳は、ドーパミンが欲しいのだ。脳が欲しているのは、それだけなのだ。(中略)脳は物を求めているのではない。新しい物さえ求めていない。脳は、新しい物を手に入れるための「プロセス」や「期待感」を求めているのだ。

――『アート・オブ・スペンディングマネー』より

つまり、私たちは「良いモノ」を求めているのではない。ドーパミンという刺激を欲しているのだ。

そう知ると、今私たちが欲しいと感じているモノが、本当に必要なのかを考える余地が生まれる。今魅力的に見えているモノは、単に「脳がドーパミンを欲している」から魅力的に見えているのかもしれない。そう冷静に考えられるなら、私たちは不要な買い物をもう少し避けられそうだ。もしそれを買ったとしても、結局また“別の何か”を欲しくなるのだから。

『アート・オブ・スペンディングマネー』の中で著者モーガン・ハウセルは、「欲望を減らすことは、お金を増やすことと同じくらい、私たちの幸福度に影響する」と述べている。

私たちがお金を貯め、使うのは、生きていくためだけでなく、幸せになるためでもあるはずだ。だからこそ、お金を増やすことと同じくらい、お金の使い方についてももっと考える必要があるかもしれない。

(本原稿は、『アート・オブ・スペンディングマネー 1度きりの人生で「お金」をどう使うべきか?』(モーガン・ハウセル著・児島修訳)に関連した書き下ろし記事です)