ヤン・ルカン氏はメタでは異端児となっているPHOTO: JUSTIN J WEE FOR WSJ
人工知能(AI)研究者のヤン・ルカン氏(65)は1980年代に大学院生だった頃、機械学習に関する博士論文を執筆するための指導教官を見つけられずにいた。そのテーマを研究している人が他に誰もいなかったからだ。彼は後にそう振り返る。
最近では、ルカン氏は米メタ・プラットフォームズの中で異端児となっている。「AIのゴッドファーザー」の一人として世界的に名をはせたが、メタの方向性が彼のAIの未来に対する見解と乖離(かいり)したことで、徐々に脇に追いやられている。近く メタを退社して いわゆる世界モデルの開発に注力するスタートアップを設立することを検討していると、11日に報じられた。ルカン氏はこの技術が、メタの現在の言語モデルよりもAIの状態を進歩させる可能性が高いと考えている。
メタのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は「スーパーインテリジェンス(超知能)」の研究に何十億ドルもつぎ込んでいる。 多数のトップ研究者を雇い 、同社の大規模言語モデル(LLM)「Llama(ラマ)」に対話型AI「チャットGPT」やグーグルの「Gemini(ジェミニ)」を上回る性能を持たせるための開発を進めている。
ルカン氏は自らの選択で異なる方向を目指すことにした。誰に聞かれても、LLMは真に人間の思考を超えるコンピューターの追求において行き詰まりだと答えている。現在の最先端モデルであるLLMを猫の頭脳と比較するのを好み、猫の方が賢いと考えている。数年前、メタのAI研究部門「FAIR」を率いる立場から身を引き、長期的研究に従事して個人で貢献する道を選んだ。
「私は、メタでもそうだが、シリコンバレーのどの界隈(かいわい)に行っても友人が見つからない。3~5年以内にこれ(LLMではなく世界モデル)がAIアーキテクチャーの主流モデルになり、いま手元にあるようなLLMはまともな人間なら誰も使わなくなると主張しているからだ」。先月、マサチューセッツ工科大学(MIT)のシンポジウムでこう述べた。







