AI(人工知能)トレードはなお苦境にある。

 AI関連銘柄の指標的存在である半導体大手エヌビディアの好決算を受けて、東京から20日序盤のニューヨークまで株価が急伸した。しかしその後、株価指数は反転し、4月に関税問題で市場が混乱して以来最大の上げ幅消失となった。

 この急激な値動きは、AIブームの中心にある銘柄にとって苦しい局面を長引かせるものとなった。これらの銘柄の膨らんだバリュエーションや積極的な支出計画に対して、投資家がいかに神経質になっているかを示しており、一部ではバブルの兆候ではないかと懸念する声もある。

 20日に懸念に拍車をかけたのは、米政府機関閉鎖で遅れていた雇用統計の発表だった。これにより数週間に及ぶ主要経済指標の空白期間は終わったものの、労働市場の現状や長らく議論されてきた米連邦準備制度理事会(FRB)による12月の利下げの可能性についてはほとんど明確にならなかった。

 投資家は一時、霧が晴れたことを歓迎し、ナスダック総合指数は2.6%高まで急伸した。その後、テクノロジー株が急落し、同指数は2.2%安で引けた。エヌビディアは一時5%上昇したが、最終的には3%安で取引を終えた。ビットコインは再び急落し、午後4時時点の水準としては4月以来の安値を付けた。米国市場の「恐怖指数」として知られるシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ指数(VIX)は約12%上昇した。

 ウィルミントン・トラスト・インベストメント・アドバイザーズのトニー・ロス最高投資責任者(CIO)は「私が注目しているのは、これほど大きな変動を引き起こすような実質的なナラティブ(物語)の転換が見られないことだ。今の市場にはあまり自信がない」と述べた。

 S&P500種指数は一時1.9%上昇したが、1.6%安で取引を終了。ダウ工業株30種平均は1000ドル以上も乱高下し、700ドル超の上げ幅を失って387ドル(0.8%)安で引けた。