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ITベンダーにとっても一大商機となるAIエージェント市場。富士通が米エヌビディアとAIで包括提携をしたほか、米OpenAIの代理店契約を独占で勝ち取ったNTTデータなど、各社AIエージェント事業強化に余念がない。だが、ITベンダーの事業単体としては利益を確保する道筋が見えないのもAIエージェント市場だ。これを制するITベンダーはどこか。特集『DX2025 エージェントAIが来る』(全21回)の#13では、全主要プレーヤーへの取材を基に、その緒戦の様子を見通そう。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
富士通はエヌビディアとガチ提携
AIエージェント市場を巡り群雄割拠状態に
「ここで素晴らしいゲストの方にご登壇いただこうと思います。今日、この両社協業の発表のために来てくれました。本日、このステージ上で共に立てることを大変光栄に思っています」
10月3日、東京丸の内、パレスホテル。宴会場に100人以上の記者を集めたステージ上で時田隆仁・富士通社長がこう宣言すると、トレードマークの黒い革ジャンに身を包んだジェンスン・フアン・米エヌビディア最高経営責任者(CEO)が上手から現れた。
「今日はエヌビディアにとって、そして私たちの良き友人である富士通にとって、とても重要な日です。私たちは長い間この業界にいますが、これは『一生に一度』の機会です」――。フアンCEOは時田社長にこう呼びかけた。
ここ数年、AI関連事業を手掛ける各社は、ことさら「エヌビディアとの提携・協業」を追い求めてきた。実質的には画像処理半導体(GPU)を購入しているだけだったり、実態がなかったりするものまで一方的に「協業」として吹聴されることも多かった。エヌビディアの単語がニュースリリースに入るだけで、注目され株価が上がると分かっているからだ。そうした中でも、フアンCEOまで立ち会った富士通の異例の発表はこれまでのところ、最も「ガチ」なものだった。
ジェンスン・フアンCEO(右)まで駆けつけた富士通の提携発表 Photo by Yoko.Suzuki
富士通が持つAI基盤「Kozuchi」と、エヌビディアの技術を組み合わせて、産業向けの自律的に成長するAIエージェントモデルを作る。企業ごとに違う業務や業界に合わせてAIが学び、カスタマイズできる仕組みを整える。完成されたAIモデルは、エヌビディアのNIMマイクロサービスというサービス上で誰でもすぐ使える形で提供される。
富士通とエヌビディアは理化学研究所が開発する次世代スパコンの富岳NEXTでも協業しているが、同様に富士通のスパコン向けCPU「MONAKA」と、エヌビディアのGPUを直結させた新AI計算基盤を共同開発することも発表された。
2025年のバズワードともなったAIエージェント。企業のITシステムの相当程度が、将来的には複数のAIエージェントを取りまとめるエージェント型AI(エージェントAI)を取り入れたものに置き換わっていくという予測もある。これまでITシステムを主戦場にしてきたITベンダー各社は、そのうちほぼ全社が参入を表明しているといってもいい。ここでどのようなポジションを確保できるかどうかで、将来の趨勢が決まるからだ。
実は、現状でAI事業単体で黒字を達している企業は海外を含めても、ほぼない。今後を見据えても、黒字化の道のりはハードルが高そうだ。さらには、数年後にAI分野で生き残れる企業は一握りという予測すらある。そんな中、各社はどうやって黒字を実現しようとしているのか。主要企業に取材をすると、そのスタンスはそれぞれ大きく異なることが見て取れる。来るべきエージェントAI時代に、勝ち組となるITベンダーはどこなのか。早速次ページから詳しく企業ごとの戦略を見てみよう。







