中国、台湾巡り進める「ペンと銃」戦略Photo:Pool/gettyimages

 中国建国の父・毛沢東はかつて、中国が敵対勢力に向けて「ペンと銃」の両方を駆使しなければならないと語った。現在の中国は、この戦略を台湾に対して強化している。

 いわゆる「ペン(メディアによる思想宣伝)」として、中国国営テレビは、国民に台湾への圧力を新たな段階に高める動きへの準備を促している。

 国営テレビのゴールデンタイム枠では、新たな歴史ドラマ「沈黙的栄耀(The Silent Honor)」が放映されている。このドラマは、1949年に国共内戦で毛沢東率いる勢力に敗北した国民党が台湾に逃れた後、現地で活動した共産党工作員たちを英雄視しており、彼らの諜報(ちょうほう)活動と最終的な処刑を、「統一」という大義のための殉死として描いている。

 これと並行して、国家的闘争に向けて文化活動を方向転換させるトップダウンの指令が出ていることが示唆されている。事情に詳しい関係者によると、国営の劇団は戦争をテーマにした作品にしか上演許可を得られず、他のジャンルは却下されている。

 この国内向けのメッセージ発信は、中国国内で既に高まっている中台統一レトリックの雰囲気を一層強めるものだ。そしてこの動きは、軍事力によって裏付けられている。

 中国指導部は台湾の支援勢力、とりわけ日本の影響力をそぐことに注力している。これは、高市早苗首相が11月7日、中国が台湾を占領すれば、日本はいかなる紛争にも関与することになると警告したのを受けた動きだ。

 高市氏の発言に対し、中国の薛剣・駐大阪総領事はX(旧ツイッター)に、高市氏の「汚い首」を「斬ってやる」と投稿し、世界を震撼(しんかん)させた。投稿はその後削除されたが、中国政府の意思決定に詳しい関係者によれば、これは日本の決意を試すことを狙った、国家の承認済みの計画的な行為だった。

 同時に、中国軍は先週末、状況をエスカレートさせる構えを示唆し、中国と日本が領有権を主張している島々の付近に武装した中国海警局の船4隻を送り込んだ。台湾に最も近く、日本の最西端に位置する与那国島の付近では、上空を飛行した中国軍の無人機に対応するため、日本の戦闘機が緊急発進を行った。