シンガポール国立大学(NUS)リー・クアンユー公共政策大学院の「アジア地政学プログラム」は、日本や東南アジアで活躍するビジネスリーダーや官僚などが多数参加する超人気講座。同講座を主宰する田村耕太郎氏の最新刊、『君はなぜ学ばないのか?』(ダイヤモンド社)は、その人気講座のエッセンスと精神を凝縮した一冊。私たちは今、世界が大きく変わろうとする歴史的な大転換点に直面しています。激変の時代を生き抜くために不可欠な「学び」とは何か? 本連載では、この激変の時代を楽しく幸せにたくましく生き抜くためのマインドセットと、具体的な学びの内容について、同書から抜粋・編集してお届けします。
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人生で最も大事なのは時間
シンガポールから日本に来るたびに、旧来の知人に会っているが、いまだに驚くことがある。
「時間がない!」「会議が、あと何件も入っている!」とか、自分に主体性がない感じで、「忙しい、忙しい」を連発している人が、なんと多いことか。
「人生で最も大事なのは時間」だということを、まだわかっていないのだろうか。
時間は、お金では買えない。寿命は間違いなく延びるだろうが、タイムマシンまでできるとは思えない。
若返りも、まだまだ時間がかかるだろう。
すぐに親元を離れてしまう子供との時間は、年々短くなっていく。
私も人生の折り返し点を過ぎたあたりから、親や素晴らしい先輩方が言っていた「いくらお金があっても時間は買えないよ」という言葉の重みがわかってきた。
自分の子供を見ていると、彼らの無尽蔵なエネルギーや疲れを知らない体力などは、私のようにかなりの節制をしてトレーニングをしていても、いやそれをしているからこそ、取り戻すことはできないことを痛感する。
兆円単位の資産があって、それを全部使ったとしても、20歳、30歳、あの頃と同じ形でエネルギーを再生することはできない。
資産家の多くは、暇人だった
シンガポールに移住してから、国籍にかかわらず、資産家の多くが暇人であることにも驚いた。
彼らは「資本主義なんだから、自分はなるべく働かないで、お金に働いてもらいなさい」と真顔でいう。確かに、純粋な定義でいえば、お金に働かせるのが資本主義である。
もう一つ驚いたことは、彼らにとって重要な案件であれば、「次のアポはいつでもいい」ということだ。スケジュールはガラガラである。
“自分が自由に使える時間を多く持っている者勝ち”と、いわんばかりの価値観を教えられたのだ。
これは私の実感だが、「いい話は急に来る」ということだ。当たり前である。
いい話が私のスケジュールに合わせて来てくれるわけがない。つまり、どうでもいい用件で予定をパンパンにしていたら、「いい話」が急に来たときに、対応できないのだ。
それを痛感してからは、「時間の無駄使い」は、一切やめた。
用件の内容を精査して、
・本当に必要なアポイントなのか?
・自分や他人の時間を泥棒しているにすぎないのか?
この時間と、家族や自分のための時間を比較して、どちらにバリューがあるかを冷徹に精査するようになった。
ほとんどの予定は
「儀式」か「作業」でしかない
すると、ほとんどの予定が「儀式」か「作業」でしかないことがわかった。
それからは、どんどんそういうものをスクラップしていき、ハッキリと断るようにした。
そうすると、そういう予定はだんだん入らなくなったが、私の資産や収入には打撃はなかった。それどころか、資産も収入も増えた気がする。
何より家族との時間が増えたことが大きい。
子供と過ごす時間を増やすと、いかに通常のコミュニケーションより、一緒に時間を過ごすことが、子供を理解することにつながるかが腑に落ちた。
また、本を読んだり、AIと壁打ちする時間や家族と食事をしたり、国外へ一緒に旅したりする時間やトレーニングなど、自分をいたわる時間も増やした。
こちらのほうが脳内に幸せホルモンがたくさん出るし、リフレッシュもできて、チャレンジングで、タフな仕事に向き合うエネルギーをもらえる。
さらに仕事以外の時間から、仕事の価値を上げるアイデアを思いついたりもする。
そもそも忙しくて、たとえ資産や収入が増えても、家族や自分のために使う時間が少なくなれば、本末転倒ではないか。
(本稿は『君はなぜ学ばないのか?』の一部を抜粋・編集したものです)
シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院 兼任教授、カリフォルニア大学サンディエゴ校グローバル・リーダーシップ・インスティテュート フェロー、一橋ビジネススクール 客員教授(2022~2026年)。元参議院議員。早稲田大学卒業後、慶應義塾大学大学院(MBA)、デューク大学法律大学院、イェール大学大学院修了。オックスフォード大学AMPおよび東京大学EMP修了。山一證券にてM&A仲介業務に従事。米国留学を経て大阪日日新聞社社長。2002年に初当選し、2010年まで参議院議員。第一次安倍内閣で内閣府大臣政務官(経済・財政、金融、再チャレンジ、地方分権)を務めた。
2010年イェール大学フェロー、2011年ハーバード大学リサーチアソシエイト、世界で最も多くのノーベル賞受賞者(29名)を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で当時唯一の日本人研究員となる。2012年、日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)の主人公となる。ミルケン・インスティテュート 前アジアフェロー。
2014年より、シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授としてビジネスパーソン向け「アジア地政学プログラム」を運営し、25期にわたり600名を超えるビジネスリーダーたちが修了。2022年よりカリフォルニア大学サンディエゴ校においても「アメリカ地政学プログラム」を主宰。
CNBCコメンテーター、世界最大のインド系インターナショナルスクールGIISのアドバイザリー・ボードメンバー。米国、シンガポール、イスラエル、アフリカのベンチャーキャピタルのリミテッド・パートナーを務める。OpenAI、Scale AI、SpaceX、Neuralink等、70社以上の世界のテクノロジースタートアップに投資する個人投資家でもある。シリーズ累計91万部突破のベストセラー『頭に来てもアホとは戦うな!』など著書多数。



