10月のある日、オーストラリアの農業地帯にある小さな空港から1機の小型飛行機が飛び立った。将来の戦場で、米軍の無人機(ドローン)や航空機、艦船の航法(ナビゲーション)を一変させる可能性がある装置を載せていた。テスト飛行に搭載された装置は、原子にレーザーを照射するものだ。これらの原子はコンパスの針のような働きをし、地球の磁場をリアルタイムで測定する。読み込まれた測定値を磁場マップと突き合わせることで、ユーザーは自分の位置を特定できる。GPS(衛星利用測位システム)などの従来の航法が使えない場合の予備的な手段となる。米国とその同盟国にとって新たな航法を見つけることは喫緊の課題だ。ウクライナの戦争では、ロシアが電波妨害や信号の偽装といった電子戦をあまりに頻繁に行うため、衛星を利用した航法は頼りにならない。中国や北朝鮮など他の仮想敵国も同様の能力を持っている。