Photo:YOSHIKAZU TSUNO/gettyimages
東京ディズニーリゾートに57歳で入社し、65歳で退職するまで、私がすごした“夢の国”の「ありのまま」をお伝えしよう。楽しいこと、ハッピーなことばかりの仕事などない。それはほかのすべての仕事と同様、ディズニーキャストだってそうなのである。※本稿は笠原一郎『ディズニーキャストざわざわ日記』(三五館シンシャ、2022年2月1日発行)の一部を抜粋・編集したものです。一部の人物は仮名です。
某月某日 魔法の粉の使い道
彼女が本当に欲しかったもの
オンステージで中年の女性ゲストから声をかけられた。
「すみません。あっちのほうでポップコーンをこぼしてしまったのですが……」
「わかりました。すぐに清掃します」
私はすぐにゲストと同行して現場に向かった。たしかにそこには地面にポップコーンが散乱していた。私がそのまま清掃を開始すると、女性はすぐそばでそれを見守っていた。
汚れている場所だけを知らせ、あとの対応はキャストにまかせて、御礼を言って立ち去っていく人がほとんどである。ただ、なかには自分が汚してしまったことを申し訳なく思うのか、清掃作業を見守る人もいる。
「もう大丈夫です。こちらでいたしますので」
そう告げたが、その女性はあいまいにうなずいたまま、その場に立って作業を見つめている。作業が終わるまで待ってから、あらためて御礼を言うつもりなのか。なかなかいない生真面目な女性だなと好感を持った。
3分ほどして作業を終えると、終わりましたよという意味を込めて、私は女性に微笑みかけた。
すると、彼女から予想していなかった言葉が発せられた。







