壇上で音頭を取るのは、極右系ユーチューブチャンネルとしては韓国ナンバーワンの知名度を持つ「神の一手」の申恵植代表だ。2015年から活動を始め、今では100万人を超えるチャンネル登録者を持つ。さすがに煽りには年季が入っている。
韓国メディアでは「極右集会」とも呼ばれる、尹錫悦大統領の弾劾に反対する集会だ。強い反共性が特徴であったが、近ごろこの集会の様相は米国のドナルド・トランプ支持層と酷似する独自の進化を遂げている。
「選挙を盗むな」という意味の「ストップ・ザ・スティール」は、2020年11月の米大統領選でバイデン候補に敗れたトランプ大統領が不正選挙デマを煽った際に現れたスローガンだ。翌年1月6日のワシントン米議事堂襲撃事件で世界中に知られることとなった。
韓国に取り入れられたのは、尹錫悦が非常戒厳宣布後に「不正選挙」を主張し始めたからだ。
しかしその中身は、すでに使い古された荒唐無稽なものだった。大法院で否定されたもので、陰謀論といって差し支えない内容だ。だが支持者たちはこれを真に受け、さらにそれが北朝鮮や中国の指示・介入により行われていると信じ切っている。
オールドメディアより
ユーチューブに真実がある
韓国紙の取材により、背景には強い影響力を持つ米国系のデマゴーグ(編集部注/刺激的なデマを発信し、大衆の行動や考え方に影響を与える政治家)が存在することが分かっている。極右的な思想を持つ教会の動きも組織的で、烏合の衆と言い切ることは難しい。
もっとも、集会に参加する市民は「極右」という範疇に収まらない特徴も持っている。
この日、集会では「朝鮮日報を廃刊せよ」というスローガンが連呼された。朝鮮日報といえば韓国を代表する保守紙で、尹政権下で「人事に影響力を及ぼす」とまで噂される力を誇った。
だが非常戒厳宣布を批判したことで尹錫悦の熱烈な支持者からの信頼を失い、今や廃刊対象に転落したという具合だ。







