社会的な「成功レール」の崩壊、どんどん不確実になる未来、SNSにあふれる他人の「キラキラ」…。そんな中で、自分の「やりたいこと」がわからず戸惑う人が、世代を問わず増えています。本連載は、『「やりたいこと」はなくてもいい。』(ダイヤモンド社刊)の著者・しずかみちこさんが、やりたいことを無理に探さなくても、日々が充実し、迷いがなくなり、自分らしい「道」が自然に見えてくる方法を紹介します。
Photo: Adobe Stock
「積上型」は前に進めない、は誤解
本書の中で、私は、人間には大きくわけて、目標を持ったほうがいい「逆算型」タイプと、目標を持たないほうがいい「積上型」タイプがいると書いています。
それに対してときどき、じゃあ「積上型」の人はどうやって自分の進む方向を決めるんですか? という質問です。この答えになるかもしれないので、以前働いていた会社の創業者の話をします。
将来設計のない起業家
彼は社員から将来設計について尋ねられると、いつも戸惑っていました。
「何年後にこうなりたいとか、考えたことないんだよね」と。
学生時代に起業家を目指していたわけでもありません。友人と事業アイデアを語り合うのが楽しくて、試しに作ってみたプロダクトの出来が良くて、気づいたら会社を立ち上げていました。
そして今、彼は上場企業のトップです。
計画的に起業の準備を進める人ももちろんいます。
必要なスキルを習得し、ネットワークを構築し、資金を集める。
でも彼の道のりは違いました。興味の赴くまま動いているうちに、協力者が集まり、新しい発想が生まれ、自然と事業が形になっていったのです。
「計画がなければ停滞する」という思い込み
逆算型の人は、ゴールに向かっていない状態を「停滞」だと感じてしまいます。
確かに、具体的なマイルストーンを設定し、達成度を測定していけば、自分の歩みが見えやすい。
数字で進捗が分かるのは安心感があります。
一方で、日々の関心事を追いかける生き方は、一見すると場当たり的に映るかもしれません。現状維持に甘んじているだけではないか、と。
でも実際は違います。興味を追求する姿勢が、確実に人を前進させます。
「好奇心の積み重ね」という成功の形
明確な目的地を定めて進むやり方もあれば、今この瞬間に心が動くことを選び続けるやり方もあります。
もしあなたが後者のタイプで、「ちゃんとした目標がないとダメなのでは」と迷っているなら、心配は不要です。
日々の「これ、面白そう」という直感に従っても、人生は十分前に進みます。時にはそれが、想像もしなかった大きな成果につながることもあります。
大切なのは、今日の自分が何に興味を持つか。
その選択の連続が、いつかあなたを思いがけない場所へ運んでくれるでしょう。
*本記事は、『「やりたいこと」はなくてもいい。 目標がなくても人生に迷わなくなる4つのステップ』(ダイヤモンド社刊)の著者しずかみちこさんによる書き下ろしです。




