Photo:Pallava Bagla/gettyimages
米国で最後に実施された大型原子力発電所建設プロジェクトは、予算を160億ドル(約2兆5000億円)超過し、7年遅れで完成した。米政府は現在、「AP1000」にもう一度チャンスを与えようとしている。
ドナルド・トランプ米大統領は、停滞する米原子力産業を復活させ、ウェスチングハウス・エレクトリック製の加圧水型原子炉「AP1000」のような大型原子炉を(教訓的な失敗例ではなく)普遍的な電源にすることは可能だとして、その実現に800億ドル(約12兆5000億円)を賭けている。数十年にわたり横ばいだった米国の電力需要は、今や人工知能(AI)ブームなどの追い風を受けて全国的な高まりを見せる。
米政府は10月、日本との貿易協定に基づく対米投資枠を活用し、ウェスチングハウスとその株主2社、カナダの投資会社ブルックフィールド・アセット・マネジメントと、同じくカナダのウラン採掘大手カメコと提携して、原子力発電を加速させる野心的な計画を発表した。
3社の経営陣によると、この計画の下、4カ所でAP1000が8基建設される可能性がある。実現すれば数十年ぶりの建設ペースとなる。AP1000の発電容量は約1100メガワットで、中規模都市や大型AIデータセンターの電力需要を賄える規模だ。
ウェスチングハウスのダン・サムナー暫定最高経営責任者(CEO)は、これらの原子炉が米国のAI競争での勝利とトランプ大統領の「エネルギー支配」政策の実現に役立つと述べた。
同氏はインタビューで、「当社はこの使命に全力で取り組んでいる」とし、「実現する可能性は非常に高いと考える。当社にはしかるべき技術があり、これは米国にとって理にかなった解決策だ」と語った。
ウェスチングハウスは原子炉1基当たりの「オーバーナイトコスト」を約100億ドルと見積もる。これは、発電所が一夜で建設できるとした場合の理論的なコスト(金融費用は除外)だ。
この取り決めによって、米国内での初の建設プロジェクトが問題続きとなり、それ以降の動きが停滞している技術の普及に弾みが付くかもしれない。国内で完成した唯一のAP1000(ジョージア州のボーグル原発の2基)は、当初140億ドルの費用が見込まれていたが、最終的に300億ドルを超えた。また、2基は2016年と17年に完成予定だったが、実際に運転を開始したのは23年と24年だった。







