大臣視察時も失態をさらす
お粗末なアスベスト除去の現状
「石原環境大臣は22日、都内のビルの解体現場でアスベストの飛散防止対策の状況を視察し、いまの国会に提出している飛散防止の強化策を盛り込んだ大気汚染防止法の改正案の成立に全力を尽くす考えを示しました」
5月22日午後のNHKニュースが報じた。代表取材として1社だけが現場に入って撮影したという映像では、環境省の石原伸晃大臣がアスベスト粉じんを除去するフィルターを見せてもらったりしながら、吹き付けたアスベストの除去や飛散防止の方法について説明を受けていた。
視察後、石原大臣は「今後もアスベストが使用された古い建物の解体工事が増えていくので、飛散防止のため、行政の側もしっかり監視していかなければならない」とコメントした。これを受けてNHKは、「大気汚染防止法の改正案の成立に全力を尽くす考えを示しました」と締めくくった。
このニュースを見て頭が痛くなるような思いだった。なぜなら、現場で石原大臣に説明をしていた会社名が書かれたヘルメットをかぶった作業服姿の現場責任者とおぼしき人物が、きちんと防じんマスクを着用できていなかったからである。映像からは少なくとも2人が、防じんマスクと顔のあいだに隙間ができてしまって防じんマスクが機能しない、誤った方法で使用していた。
法改正の意義を強調するために大臣が現場を視察する以上、環境省は適切に対応しているであろう大手事業者を選定しただろうし、当然ながら事業者側も特別注意して対応したはずだ。
視察現場のある港区に確認したところ、大手ゼネコンにきちんと対策ができている現場の視察を依頼したことを認めた。にもかかわらず、大臣説明という大役を任された事業者側の責任者らしき人物が、アスベストから身を守るために必須の防じんマスクすらまともに扱うことができないことが、映像で一目でわかるかたちで報じられてしまった。
たかが防じんマスクと思われるかもしれない。だが、高濃度のアスベスト粉じんが発生する除去現場で防じんマスクをきちんと着用できないというのは、命にかかわることである。ましてや、現場を指導する立場であればなおさらだ。