「いつも、考えすぎて損してばかり!!」
日本人は礼儀正しくて、とても優秀……なのに、日々必要以上に思い悩んでいないだろうか?
「“究極の合理思考”を身につければ、もっと楽しくラクになる」――。数十億規模の案件に関わり、インド人部下オペレーションを経験したインド麦茶氏は、「常に自分中心」「短期志向」「無計画で今を生きている」ように見える彼らに「日本人が幸せを謳歌するための“ヒント”」を見出したという。
新刊『インド人は悩まない』では、人口14億・上位1%が富の40%以上を所有する超競争・過密・格差社会を生き抜く人々の「規格外の行動力」と「抜け目なさ」の秘密を紹介している。今回はその魅力の中から一部をお届けする。(構成/ダイヤモンド社・榛村光哲)
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「電話をしてくるやつ」は失礼?
日本の中学校や高等学校の古文の授業では、平安時代の恋文を1000年以上後の学生が読んで、「この人は何と伝えたかったのでしょうか」という問題を解いている。
漢文の授業でも中国の漢詩を学び、ものごとの本質を短文で伝える技法を学ぶ。そして、言いたいことを何かに例え、暗に匂わせる風流さも併せて学ぶ。これら一連の授業には日本人の文化が凝縮されている。
このような義務教育の甲斐もあってか、日本人は、テキストメッセージが大好きだ。活字を読む習慣や本屋の数も充実している。ビジネス界においても、電話を毛嫌いするIT長者が言った「電話をしてくるやつは嫌だ」というよう言説に賛同の声が集まり、現代ではツールの発達がテキストメッセージをさらに強力に後押ししている。
そんな状況は、電話というコミニュ二ケーションツールにとって大逆風の時代に見える。しかしインドで働いている身からすると、そうとも言えない事情が垣間見える。
「競合よりも速い」を最重視するインド人
所変わってインド民のビジネスマンは、依然として電話を多用する。ビジネスの用事に限らず、インド民は常に誰かと電話をしている。
彼らが電話を多用する理由の一つは「早さ」、もう一つは「関係性の構築」だ。
何か相手と調整をしたいときや質問をしたいとき、一番早いのは今でも電話だ。その時に相手が電話を取ってくれさえすれば、一瞬で要件が終わり前に進むことができる。これがメールだとそうはいかない。
インド社会全体が超競争社会であり、「並んでいる大勢の人々の前にいかに躍り出るか」を常に考えている。相手の時間を邪魔して「失礼だ」と嫌われることよりも、競合の前に出るスピードが大事だ。もし本当に相手に嫌われたら別の相手を探せばいいくらいの図太い神経も持っている。
「関係性を作る」インド人
人間同士の関係性の構築のためにも電話は有効だ。テキストメッセージでは絶対に感じることができない、「人間とコミニュケーションしている感じ」を相互に強制的に得ることになる。時にはたわいもない会話をするときもあるだろう。これによって人間同士の親密度が上がる。
激しい競争の下、大して商品に違いもない中で、いかに相手にとって自分が特別な存在になれるかをインド民は考えている。そのための有効なツールがあれば迷わず使う。
考えすぎず「合理的」に生き抜くインド人
「電話は迷惑」「電話は必要な時だけ」論が広まっている日本でも、デキるビジネスマンは電話の使い方が上手い。細かいテクニックはここで語る余裕はないが、電話でのコミニュケーションを比較的多用することでビジネスのスピードを維持し、親密度を演出する技術が高い。あなたも、全く初見の電話セールスはお断りだが、少なくとも一度会って関係性ができている相手から電話が来ても嫌な気はしないはずだ。いや、むしろわざわざ電話をしてくる相手に対して親密度が上がることさえある。
源氏物語や枕草子の時代には、電話はなかったし、ZOOMやTeamsもなかった。そんな中では、手紙のテクニックが重要だったかもしれない。
しかし、その時代にもし電話があったならば、コミュ力お化けの光源氏はインド民のように毎日電話していただろうし、清少納言は永遠と電話会議で女子会を開いて女官の悪口を言っていたに違いない。
『インド人は悩まない』では、インド民がどのように競争社会を強く合理的に生き抜いているかに焦点を当て、日本人が現代社会で役立つ「幸せに生きる」ヒントを紹介している。「考えすぎ」に悩む読者の方に、インド民メンタル特異なものに映るかもしれないが、きっと悩みから解放されるはずだ。
(本記事は『インド人は悩まない』に関する特別な書き下ろし原稿です)









