「打ち合わせで完全否定」→なぜか笑顔の上司…その理由が深すぎた
戦略コンサルやシリコンバレーの経営者、MBAホルダーには、共通点があった。「伝える内容を1つに絞り、1メッセージで伝えて、人を動かす」ということ。プレゼン・会議・資料作成・面接・フィードバックなど幅広い場面で成果を上げるノウハウをまとめた書籍『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』から一部抜粋して紹介する。
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打ち合わせでクライアントから思いっきり否定される
駆け出しのコンサルタント時代の話だ。プロジェクトが始まり、クライアントの役員との最初の打ち合わせを迎えた。その場でわたしはクライアントの事業の問題点について考えていることを意見した。
しかし、クライアントの役員は、わたしが指摘した問題点を強く否定した。そして、気になっていることは他にもっとあると言って、わたしたちに自分の考えをいろいろと吐露した。
同席していたシニアコンサルタントはその吐露に耳を傾けていたが、わたしは否定されたことで頭が真っ白になっていた。そうして、役員からの否定と一方的な吐露だけで最初の打ち合わせは終わってしまった。
しかし、その帰り道に、否定されたことで打ちひしがれていたわたしは、同席していたシニアコンサルタントから意外な声をかけられた。
「今日はよかったね」と笑顔のシニアコンサルタント
そのシニアコンサルタントは笑みを浮かべてこう言った。
「今日の打ち合わせはよかったね」
その人がサイコパスではないことは知っているつもりだったので、なぜクライアントから否定されたのによかったと笑っていられるのかが不思議だった。そこでその理由を聞いたところ、わたしには学びが詰まった答えが返ってきた。
よかったのは「論点を吐き出してくれた」から
シニアコンサルタントはこう理由を教えてくれた。
「杉野さんの意見は、否定したくなるくらいはっきりしたものだった。そのおかげで、クライアントは否定しようと喋っているうちに、自分がなにを気にしているのかを言語化してくれた。わたしたちもそれを傾聴できた。そうして自ら気になっている『論点を吐き出してくれた』ので、次からはメッセージを相手に届けやすくなるはず。あそこで、杉野さんが無難なことを言っていたらクライアントは否定も論点を吐き出すこともしてくれず、プロジェクトが進んでから『こんなんじゃない』と言われて大炎上したかもしれない」
ここで「論点を吐き出す」とは、当時の駆け出しのわたしは知らないものであったが、コンサル用語の一つだ。「論点を吐き出す」とは、自分が気になっているのにまだ言語化できていなかったことを言語化してまわりに共有することだ。
クライアントの役員には気になっている問題点があったが、言語化まではできていなかった。そんなときにわたしが異なる問題点をはっきりと伝えたため、それが呼び水になり、否定するために自分が気になっている問題点を挙げようとして言語化が進んだ。そして、その言語化された吐露を傾聴することで、シニアコンサルタントは相手が気になっていることを理解できたのだ。
相手が気になっていることがわかれば、メッセージは相手に刺さりやすくなる
相手が気になっていることがわかれば、自分たちが届けるメッセージは相手に刺さりやすくなる。焦点を合わせられるからだ。
そうして、わたしは次の打ち合わせから、クライアントが吐き出してくれた気になっていることに焦点を合わせて、シンプルなメッセージで自分の考えを伝えた。結果として、クライアントも深く頷いてくれるようになり、最終的にプロジェクトも最高の成果を生み出すことができた。
相手が気になることがわからないときは、相手に話してもらい、それを傾聴しよう
相手の気になっていることがまだわからないとき、または、相手の気になっていることを間違えてしまっていたとき。
そんなときには、相手にその気になっていることを吐き出してもらおう。そして、その話をしっかりと傾聴し、気になっていることを理解しよう。相手の気になっていることは、相手のものだ。こちらで察するよりも、相手に吐き出してもらった方が理解しやすいのだ。
相手が気になっていることを知れるのであれば、相手に自分の意見を否定されるのは決して悪いものではなく、考えようによっては、むしろ、チャンスだったりするものなのだ。
(本原稿は『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』を一部抜粋・加筆したものです)









