新刊『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』は、東大・京大・早慶・旧帝大・GMARCHへ推薦入試で進学した学生の志望理由書1万件以上を分析し、合格者に共通する“子どもを伸ばす10の力”を明らかにした一冊です。「偏差値や受験難易度だけで語られがちだった子育てに新しい視点を取り入れてほしい」こう語る著者は、推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏で、推薦入試に特化した教育メディア「未来図」の運営も行っています。今回は、中学生の親御さんにも知っておいてほしい、大学の意外な評価軸について解説します。
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外に出る人が評価される
私たちはこれまで、実際に大学に合格した生徒の志望理由書を集め、どんな子が合格しているのかを徹底的に分析してきました。その中で、合格者はいくつかの『合格者の共通点』があることがわかっています。
その1つが、「越境経験」を持っていることです。自分の世界の外に出た経験を持っている学生が高く評価され、難関大学の先生から高く評価されることが多いのです。
越境経験とは、「自分の世界の外に出た経験」
「越境経験」と聞くと、多くの人が「海外留学」や「異文化交流」を思い浮かべるかもしれません。もちろん、そうした経験は大きなプラスになります。
しかし、ここで言う越境経験とは、海外経験だけを指すものではありません。“自分の慣れた環境から一歩外に出た経験”を指します。
たとえば、都会で育った高校生が、地方でフィールドワークを行う。地方の学生が、東京で企業インターンに参加する。異なる学校や年齢層の人と一緒にプロジェクトを進める。
こうした「国内の越境」でも、大学側は高く評価しています。
逆に言えば、海外留学経験があるからといって何でもかんでも評価されるわけでは全くありません。「自分の世界の外に出た経験」として自分の糧になっているかどうかを大学側は見ているといえます。
なぜ「越境」が評価されるのか
この越境経験が評価される理由は、日本社会が持つ文化的な特性にあると考えられます。日本は世界の中でも特にハイコンテクスト文化と呼ばれる国です。ハイコンテクストとは、「言葉にしなくても通じる」「空気を読む」ことでコミュニケーションが成立する文化のこと。
つまり、日本人は“同質性の高い相手と関係を築くのは非常に上手”なのです。一方で、違う価値観や文化背景を持つ相手と関係を築くことには、あまり慣れていません。
だからこそ、大学は今、「同質性の外に出られる人=越境できる人」を求めています。
異なる環境や価値観に触れ、その中で自分の考えを更新できるかどうか。その経験がある人と、そうでない人の差は、面接や志望理由書に明確に現れます。
面接で問われる「越境の深さ」
面接官は、志望理由書に書かれた活動そのものよりも、「その経験から何を学んだか」を重視します。
「なぜその場所に行こうと思ったのか?」
「そこで感じた違和感や発見は何だったか?」
「その経験が自分の考え方にどう影響したのか?」
こうした質問に対して、具体的なエピソードを交えて語れる人は、大学側から「越境して成長してきた学生」として評価されます。
逆に、「ただ行ってきただけ」「楽しかった」で終わってしまうと、深みのない印象になります。ただ海外に行っているだけで評価されるわけではないわけですね。
“外の世界に触れた人”が伸びる
それが海外であれ、地方であれ、あるいは世代や職業の異なる人との関わりであれ、「越境」の本質は変わりません。異なる文化・価値観・環境に触れることで、人は初めて自分を相対化できます。
そしてその経験が、「この大学で何を学びたいか」「どう社会に関わりたいか」を語る力につながります。大学が求めているのは、“自分の世界だけで完結しない学生”です。
だからこそ、越境経験を恐れず、自分の“外”に一歩踏み出すこと。それが、総合型選抜で合格をつかむための第一歩なのだといえるでしょう。
(この記事は『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』を元に作成したオリジナル記事です)




