新刊『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』は、東大・京大・早慶・旧帝大・GMARCHへ推薦入試で進学した学生の志望理由書1万件以上を分析し、合格者に共通する“子どもを伸ばす10の力”を明らかにした一冊です。「偏差値や受験難易度だけで語られがちだった子育てに新しい視点を取り入れてほしい」こう語る著者は、推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏で、推薦入試に特化した教育メディア「未来図」の運営も行っています。今回は、小中学生のお子さんを持つご家庭も取り組める、子どもの考える力を伸ばす“たった1分の習慣”について解説します。

偏差値 学歴 受験Photo: Adobe Stock

親子の「会話力」が、合否を分ける

最近の大学入試では、学力だけではなく、社会問題や時事的な話題に対してどれだけ自分の意見を持てるかが問われるようになっています。

特に総合型選抜入試では、「あなたは今の社会をどう変えたいですか?」「最近気になったニュースはありますか?」といった質問が面接や志望理由書で頻繁に出てきます。

つまり、総合型選抜は「自分で考える力」を評価する入試です。

そして、この“考える力”を育てるうえで最も重要なのが、家庭での親子の会話力なのです。

家庭の「会話環境」が、思考力を育てる

私がこれまで多くの受験生を見てきて感じるのは、総合型選抜で合格する子の多くが、「家でよく会話をしている家庭」で育っているということです。

それは、特別に知識を教え込むような家庭ではありません。たとえば、食卓で家族とニュースを見ながら何気なく話す――。たったそれだけのことが、子どもの“考える習慣”を作っていくのです。

たとえば、
「高市さんが総裁になったけど、これから日本はどう変わると思う?」
「大阪・関西万博は開催されて良かったと思う?」
「最近円安が進んでるけど、これって私たちの生活にどんな影響があるんだろう?」

こうした会話が家庭で交わされているだけで、子どもは自然とニュースを“自分ごと”として考えるようになります。

「会話が多い家庭」と「会話が少ない家庭」の違い

実際、面接練習をしていると、その差は驚くほどはっきりと出ます。会話が多い家庭で育った子は、社会問題について尋ねられても自分の言葉で語ることができます。

「物価高って、コンビニのお弁当にも影響していると思う。最近値段が上がったのを見て、母と家計の話をしたことがあるんです」

このように、日常生活と社会の出来事を結びつけて話すことができるのです。

一方で、会話が少ない家庭の子は、面接でもそれがバレてしまいます。社会問題に無関心というよりも、「考える習慣がない」ことが伝わってしまうのです。

「教える」よりも「話しかける」ことが大事

ここで勘違いしてほしくないのは、時事ニュースを子どもに教え込む必要はないということです。親が一方的にニュースの解説をしたり、政治経済をレクチャーするのは逆効果になりかねません。

大切なのは、一緒に考える姿勢を見せることです。

「このニュース、難しいけどお母さんもよくわかんないんだよね。でも、こういうことなのかな?」

こうした会話を通じて、子どもは「ニュースは正解を覚えるものではなく、自分の意見を考えるものなんだ」と気づきます。それが、総合型入試で評価される“思考の深さ”につながっていくのです。

親が「ニュースに関心を持っている家庭」は強い

総合型選抜では、単に知識を持っているだけではなく、社会への関心の高さが評価されます。ですから、親御さん自身がニュースに関心を持っていることが、実は子どもの合格にも直結していきます。

家のテレビがいつもバラエティ番組ばかりではなく、ニュース番組が流れている家庭。新聞がリビングに置かれていて、親がそれを読んでいる家庭。

それだけで、子どもは「社会のことを考えるのが当たり前」という環境で育つのです。親が「ニュースを読む背中」を見せるだけで、子どもは自然と学びます。それは勉強を教えるよりも、ずっと大きな教育効果を生むのです。

(この記事は『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』を元に作成したオリジナル記事です)