「うちの教育は合っているんでしょうか…?」こうした親御さんからの悩みをよく聞きます。
新刊『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』は、東大・京大・早慶・旧帝大・GMARCHへ推薦入試で進学した学生の志望理由書1万件以上を分析し、合格者に共通する“子どもを伸ばす10の力”を明らかにした一冊です。「偏差値や受験難易度だけで語られがちだった子育てに新しい視点を取り入れてほしい」こう語る著者は、推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏で、推薦入試に特化した教育メディア「未来図」の運営も行っています。今回は、推薦入試の現状をもとに、勉強や習いごとなどの子育ての悩みについて解説します。

教育 子育てPhoto: Adobe Stock

「うちの教育は合っているんでしょうか…?」」

最近、塾での面談や保護者の方との相談を通じて、強く感じることがあります。それは、子育てに不安を抱える親御さんが本当に増えているということです。

面談の中で最もよく聞かれる質問が、「うちの教育は、これで合っていますか?」という言葉です。勉強の進め方、習い事の選び方、塾の併用、スマホとの付き合い方……。どのテーマを取っても、親御さんたちは常に「正解」を探しています。

不安が増える背景①「核家族化」と「一人っ子化」

まず一つ目の理由は、家庭の構造が変化していることです。

かつては三世代同居や兄弟姉妹の多い家庭も多く、「上の子のときはこうだったから、下の子もこのパターンで大丈夫」「おばあちゃんに相談したらこう言ってくれた」といった“経験の共有”が自然に行われていました。

ところが今は、核家族化が進み、兄弟姉妹も少なく、一人っ子の家庭が主流になりつつあります。

その結果、「比較できる子育て経験」が家庭の中になくなってしまいました。

さらに、親戚に相談しようとしても、「もう子どもが成人していて話が合わない」「そもそも子どものいる親戚が少ない」といった状況も多いようです。

こうして、親が頼れる“先輩の声”が身近にいなくなり、すべてを親だけ、1人のケースだけで判断しなければならない状況が増えています。

不安が増える背景②「時代の変化が速すぎる」

もう一つの理由は、社会や教育の変化があまりにも速すぎることです。

10年前の常識が、今では通用しません。スマートフォンやSNSの普及、AIの登場、テクノロジーの進化など、大人が学生だった頃にはなかった問題や価値観が、今の子どもたちの周りには溢れています。

教育の世界も同様です。

「偏差値で決まる入試」から、「多面的に評価する入試」へと大きく変化しました。特に総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜が広がり、テストの点数以外の力が評価される時代になっています。

しかし、その仕組みがまだ十分に理解されていないため、「うちの子は総合型を受けるチャンスがあるのか?」「何をしておけば評価されるのか?」と、不安になる親御さんが非常に多いのです。

「正解を探す」より、「子どもを見つめる」

ただ、私はいつもこうお伝えしています。

「子育てに正解はありません」

どんなに情報を集めても、どんなに“成功例”を聞いても、あなたのお子さんに当てはまるとは限らないのです。
子どもは一人ひとり違います。学び方も、得意なことも、やる気の出るタイミングもバラバラです。

たとえば、総合型選抜で合格した生徒たちを見ても、「この勉強法をやれば受かる」という共通点はありません。ただひとつ共通しているのは、自分の興味関心を伸ばしてもらえた家庭で育っているということ

「ボディービルを通して倫理を学んだ子」
「野球観戦から経済学に興味を持った子」
「アニメの世界観を研究して文学部に進んだ子」

こうした子どもたちはみんな、親に「そんなことやってないで勉強しなさい」と言われなかったタイプです。むしろ、「面白いね」「それ、どうして好きなの?」と、興味を肯定してもらった経験を持っています。

総合型選抜が教えてくれる「子育ての希望」

実は、総合型選抜という制度は、現代の子育てに対する希望のような存在だと思います。なぜなら、「個性」や「経験」を評価してくれる入試だからです。

たとえ中学受験で失敗しても、内申点が悪くても、適切に親が子どもに接していれば、「その後の経験や成長」で十分に挽回できます。むしろその失敗も「ストーリー」として大学にうまくプレゼンできるかもしれません。大学は点数では測れない力を持つ子どもを積極的に評価しようとしています。

つまり、どんな育ち方をしても、親が子どもの興味を否定せず、成長のチャンスを奪わなければ、可能性は後からいくらでも開けるのです。

子どもが興味を持ったことを止めずに見守る。失敗しても責めずに、「次どうしようか」と一緒に考える。その積み重ねが、結果的に“非認知能力”を育て、将来の進路の幅を広げていきます。

子育てに不安を抱くのは当然のことです。しかし、どんなに時代が変わっても、子どもを信じ、興味を育てることの価値は変わりません。時代の正解はどんどん変わっていきます。でも、「子どもに寄り添う」という親の姿勢だけは、どんな時代でも普遍です。

焦らず、比べず、子どもの「好き」を信じてあげてください。その興味こそが、未来を切り開く最大のエネルギーになるのです。

(この記事は『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』を元に作成したオリジナル記事です)