よいリーダーを目指すあなたに、足りないものは何か――。それは、センスや経験ではなく、経営学の知識に裏打ちされた「考え方」かもしれない。書籍『リーダーシップの科学』は、最新のリーダーシップ論の知見まで網羅した1冊だ。リーダーが経験や特定のリーダーシップのスタイルに頼るのではなく、知識をもとに、考え、実践する方法について述べている。本記事では、そのエッセンスを一部抜粋・編集して紹介する。
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「いつもと同じ」を繰りかえすリーダーは、成果を出せない
リーダーが直面する状況は、似たように見えて常に新しい状況だ。
当たり前だが、部下は人間である。部下が異なれば状況は異なるし、同じ部下であっても、こちらの働きかけに対して、いつでもどこでも同じように反応してくれるとは限らない。
たとえば、子育ての場面を想像してほしい。子どもが勉強でつまずき、成績が伸び悩んでいるとする。ここで多くの親は、これまで「うまくいったやり方」を繰り返そうとする。「もっと勉強しなさい」「前はこうしたらできたでしょう」といった声かけなどだ。
しかし、同じ言葉かけが、同じように機能するとは限らない。学年が上がり、教科が変わり、友人関係も変わる――子どもが置かれている状況は、常に変化している。成績が伸び悩む原因は、以前とまったく同じではないのだ。
リーダーシップも同様である。部下の成果が上がらない時、過去の成功体験に基づく「お決まりの対応」を繰り返してはいないだろうか。必要なのは、型を当てはめることではなく、目の前の状況を踏まえて想像し、部下への働きかけを更新し続けることだ。
つまり、リーダーはルーティンのように自動的にリーダーシップを振るうのではなく、常に考える必要がある。
経験だけに基づいた偏ったリーダーシップが上手くいかないのはもちろん、オーセンティック・リーダーシップ、サーバント・リーダーシップなど最新のリーダーシップの「型」を学び、リアリティなく同じやり方で振りかざしていてもダメなのだ。
正解を探す人は、思考が止まっている
リーダーには、さまざまなリーダーシップのあり方を実践的に思考し、リーダーシップを振るっていくことが求められる。その際に役立つのが「リーダーシップ論」である。
リーダーシップについて知識を得ることが、なぜ良いリーダーシップを振るうことにつながるのか。
端的に言えば、リーダーシップの知識を深めることが、リーダーの想像力を高め、想像の精度を上げ、より良いリーダーシップを振るうことにつながるからだ。
リーダーシップで重要なことは、「このようにリーダーシップを振るった場合、メンバーがどのように反応するか」を想像できるかである。家族やよく知っている友人からですら、自分の行動に対して、思いもしないリアクションが返ってくることはある。
そう考えると、チームメンバーの反応など、当然正確に読めるはずもない。ましてや一緒に働いて間もないメンバーであれば尚更である。
しかし、リーダーシップを振るう場面で、「メンバーがどのように動くかわからない」からと、行き当たりばったりでリーダーが行動してはどうしようもない。メンバーが想定通りに動いてくれなければ、目標を達成できるかも予想できない。
優れたリーダーは、自分の経験や知識などから適切と思われるリーダーシップを振るい、組織やチームを動かしていく。この「適切と思われる」という思考の際に重要なのがリーダーシップの想像力になる。
そこで起こることをできる限り精度を上げ、そして広い視野で想像することができれば、おのずと適切なリーダーシップにつながる。このような精度や視野は、知識や経験などから育まれる。
この知識の部分を支えるのがリーダーシップ論なのである。
(本稿は書籍『リーダーシップの科学』を一部抜粋・編集したものです)






