Photo by Shogo Murakami 衣装協力=イザイア/ISAIA Napoli 東京ミッドタウン メイク協力=ラ・メール スタイリスト=川田真梨子 ヘアメイク=林摩規子
偉大な創業者が築いた事業を継承する二代目、三代目。あるいは、圧倒的な成果を上げた前任者の後を引き継ぐプロジェクトリーダー。ビジネスの世界では、常に他者と比較されるプレッシャーがつきまとう。「鬼平犯科帳」シリーズで長谷川平蔵役を演じる歌舞伎俳優・松本幸四郎もまた、祖父である初代・松本白鸚、叔父・中村吉右衛門という巨星の跡を継ぐ者として、その重圧と向き合い続けてきたのではないか。向き合い方について、ビジネス誌「プレジデント」の元編集長・小倉健一氏が聞いた。(歌舞伎俳優 松本幸四郎、取材・構成/小倉健一)
長谷川平蔵を演じる
プレッシャーは大きかった
――ビジネスの世界では、偉大な先代を持つ後継者は、常に「比較される」というプレッシャーに苛まれます。特に「鬼平犯科帳」の主人公・長谷川平蔵役という、叔父様が国民的キャラクターにまで押し上げた役柄を引き継ぐにあたり、その重圧は想像を絶するものがあったのではないでしょうか。
松本幸四郎さん(以下、幸四郎) もちろん、長谷川平蔵を演じるプレッシャーは大きかったです。私自身は、リアルタイムで叔父・中村吉右衛門が主演を務めた「鬼平犯科帳」を見ていた世代ですので、「鬼平犯科帳」に関しては、私の中ではもう「平蔵イコール叔父」というイメージが強烈に固まっていました。
ですから、自分がそれを「やりたい」とか、「憧れる」とか、そういう次元にはなかった役柄だったのです。歌舞伎の他の役であれば、祖父や父や叔父が演じているのを見て「自分もいつか」と自然に思えるのですが、この役だけは特別でした。
――それほどまでに大きな存在だったのですね。オファーが来た際にはどのような心境だったのでしょうか。
幸四郎 お話をいただいた時には、もちろん驚きが先に立ちました。ただ、それと同時に、私のところにこの話を持ってきてくださった方々がいる、その経緯と熱意がある、という事実を何よりも尊重すべきだと感じたのです。
ですから、私がこの役を演じるか演じないかという判断をするのは、もう自分ではないな、と。少し大袈裟に聞こえるかもしれませんが、これは一種の「運命」なのだと感じ、お引き受けすると即答しました。
オファーを受けてから
真っ先にしたこととは
――ビジネスシーンに置き換えると、仕事を引き受けた後、「前任者のやり方を真似しても比較される」「新しいことを試みても、受け入れられるか不安」というジレンマにぶつかります。幸四郎さんは、この課題にどう向き合われましたか。







