シンガポール国立大学(NUS)リー・クアンユー公共政策大学院の「アジア地政学プログラム」は、日本や東南アジアで活躍するビジネスリーダーや官僚などが多数参加する超人気講座。同講座を主宰する田村耕太郎氏の最新刊、『君はなぜ学ばないのか?』(ダイヤモンド社)は、その人気講座のエッセンスと精神を凝縮した一冊。私たちは今、世界が大きく変わろうとする歴史的な大転換点に直面しています。激変の時代を生き抜くために不可欠な「学び」とは何か? 本連載では、この激変の時代を楽しく幸せにたくましく生き抜くためのマインドセットと、具体的な学びの内容について、同書から抜粋・編集してお届けします。
Photo: Adobe Stock
上手な投資の鉄則は「安く買うこと」
上手な投資に必要不可欠なのが「安く買うこと」である。
上手な投資とは、「時流に乗ること」ではない。あくまで「安く」買うことである。
あなたは、世界で最も成功した個人投資家をご存じだろうか?
その方は、正確には「その方々」の投資は、現在価格で投資額の約2万倍のリターン、となっている。これは、まずありえない。私の周りには2万倍どころか、1000倍になった人もいなければ、10倍になった人もほとんどいない。
理論的には、上場株で100倍になっている株はいくつかある。
でも、人間のサガとして100倍とかは無理なのだ。なぜなら、そこまで我慢できないからだ。
普通の人は、10倍までも待てない。5倍も難しいだろう。ありうるのは2倍、3倍くらいか?
10倍まで待てるのは、買ったことを忘れていた人くらいしか、ありえない。
いい投資の鉄則の一つは「買ったら忘れる」ことである。常に株価をチェックしているような人に10倍、100倍、1000倍とかは無理である。
退職金のほぼすべてを、息子に差し出す
話を戻すが、その「世界一成功した個人投資家」の正体は、アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏のご両親である。なぜか?
それはジェフ・ベゾス氏が起業したときの起業資金そのものを、両親が拠出したからだ。
なぜ、両親が出したのか?
それはほかに誰も、当時のジェフ・ベゾス氏のアイデアを買わなかったからだ。
現在では、唯一無二の存在であるアマゾン。しかし、彼が創業し立ての頃のピッチでは、「インターネット上に世界最大の書店を創る」というものだった。
当時は、このアイデアはまったく受けなかったようだ。結局、創業資金がないジェフ・ベゾス氏は、両親に泣きついた。
両親も「世界一の本屋を創る」アイデアを買ったわけではない。
「息子の想いだから」だったらしい。退職金のほぼすべてを、息子の起業に差し出したという。
それから30年ほどがたち、その退職金は約2万倍となっている。これこそが究極に「安く買った」事例である。
(本稿は『君はなぜ学ばないのか?』の一部を抜粋・編集したものです)
シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院 兼任教授、カリフォルニア大学サンディエゴ校グローバル・リーダーシップ・インスティテュート フェロー、一橋ビジネススクール 客員教授(2022~2026年)。元参議院議員。早稲田大学卒業後、慶應義塾大学大学院(MBA)、デューク大学法律大学院、イェール大学大学院修了。オックスフォード大学AMPおよび東京大学EMP修了。山一證券にてM&A仲介業務に従事。米国留学を経て大阪日日新聞社社長。2002年に初当選し、2010年まで参議院議員。第一次安倍内閣で内閣府大臣政務官(経済・財政、金融、再チャレンジ、地方分権)を務めた。
2010年イェール大学フェロー、2011年ハーバード大学リサーチアソシエイト、世界で最も多くのノーベル賞受賞者(29名)を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で当時唯一の日本人研究員となる。2012年、日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)の主人公となる。ミルケン・インスティテュート 前アジアフェロー。
2014年より、シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授としてビジネスパーソン向け「アジア地政学プログラム」を運営し、25期にわたり600名を超えるビジネスリーダーたちが修了。2022年よりカリフォルニア大学サンディエゴ校においても「アメリカ地政学プログラム」を主宰。
CNBCコメンテーター、世界最大のインド系インターナショナルスクールGIISのアドバイザリー・ボードメンバー。米国、シンガポール、イスラエル、アフリカのベンチャーキャピタルのリミテッド・パートナーを務める。OpenAI、Scale AI、SpaceX、Neuralink等、70社以上の世界のテクノロジースタートアップに投資する個人投資家でもある。シリーズ累計91万部突破のベストセラー『頭に来てもアホとは戦うな!』など著書多数。



