分配金UPの秘策「物件の入替」!
一時的な増配と安定還元の見極め方

Photo: Adobe StockPhoto: Adobe Stock

 近年、Jリートでよく聞く言葉に「物件の入替」がある。Jリートの成長に欠かせないといわれるが、そもそもなぜ、新規調達ではなく入替なのだろうか。

「Jリートが成長するためには、新規物件の取得が欠かせません。しかし、NAV倍率が1倍を割り込んでいると、一般的に公募増資による資金調達が難しくなってしまいます。そのため、魅力度が低下した保有物件などを売却して資金を捻出し、将来有望な新規物件を取得するという『物件入替』も多く確認されます。また、株主還元策を強化するために、物件の売却益を分配金として還元する銘柄もあります」(栗原さん)

 ただ、物件の売却益を分配金に充てるにあたり、注意すべき点があると語るのが倉島さんだ。

「物件の売却益によって分配金利回りがすごく高くなっている銘柄には注意が必要です。安定的な分配金の原資となる賃料収入が大したことない場合、増配はあくまで一時的なものです。翌期以降は大幅減配になってしまう可能性があります」

 では、分配金の好条件が一時的なものなのかどうか、判断するにはどうすればいいのだろうか。

 Mさんは「最近のJリートの決算資料はかなり充実しており、売却益が分配金のどれくらいを占めているのか確認できる」と言う。その言葉どおり、各投資法人の公式サイトには決算説明資料や資産運用報告など、多彩な資料が揃う。

「私たちは長期投資を前提としているので、いくら分配金利回りが高くでも、その水準を維持できそうにない場合は、投資を見送ることもあります」(Mさん)

 さらに、分配金の原資となる売却が、計画的かどうかも見極めのポイントだ。

「例えば3期、6期など、複数期に分けて物件を売却し、高い分配金を維持するケースもあります。このように、計画性を持って投資家へ還元を行う銘柄であれば、安定配当を期待できます」(中村さん)

 ところで、先ほど栗原さんは、物件の入替の背景の1つとして「NAV倍率が1倍を割り込んでいる」ことが理由と説明してくれた。では、NAV倍率が1倍を回復したら、物件売却による保有物件の入替は落ち着いていくのだろうか。

「Jリート市場ができてから20年以上たつので、築年が経過し、修繕コストが多くかかる物件などを保有している銘柄は少なくありません。NAV倍率が1倍を超えても、今後も成長していくために、各銘柄が保有資産(ポートフォリオ)の改善という観点から物件入替に取り組んでいくことが必要と考えます」(栗原さん)

 物件入替のトレンドは、今後も続くと見ていいだろう。

2026年の第一目標は2100ポイント!
金利上昇を上回る賃料上昇に期待

 最後に5人のプロに、2026年のリート市場の見通しについて、あらためて尋ねた。11月に2000ポイントを回復したJリートだが、12月は日本国内の金利上昇が懸念され、一時調整する場面もあった。しかし、5人のプロは「金利上昇の影響は軽微」と見る。

「日本はインフレに向かっており、不動産の価値や賃料も上がっています。インフレ率を上回る賃料の上昇を実感することができれば、金利上昇はそれほど心配する必要がないと考えています」(杉山さん)

 Mさんも「『金利上昇=Jリート市場にとってネガティブ』とは見ていません」と話す。ただし、銘柄選びで注意しているポイントもあるのだとか。

「Jリートは借入金で物件を取得していますので、調達金利や調達期間を分散するなどの工夫をしているかどうかは重視しています」(Mさん)

 「一時的な調整は、むしろ安く買えるチャンス」と考えるプロも。

「コロナ禍以降、富裕層が不動産や株で資産を増やしてきたのに対し、非富裕層は思うように資産を増やせなかった現状があります。しかし、実物不動産と証券化されたJリートとの間にはまだまだ大きなギャップがあり、Jリートが正しく評価されれば、富裕層が取ってきた成長の一部を、非富裕層もゲットできる可能性があります」(倉島さん)

 杉山さんも同調し、「個人投資家は賃貸住宅の家賃上昇対策として、Jリートへの投資を検討してみてほしい」と強調する。

 中村さんは、気になる東証リート指数の高値予想を教えてくれた。

「2026年の東証リート指数の第一目標は、NAV倍率1倍の2100ポイント程度。到達できたら、第二目標であるNAV倍率1.1倍程度の2300ポイント超えを目指す動きを予想しています」(中村さん)

 賃貸市場の好調と割安感の是正を背景に、2026年もJリート市場では引き続き強い値動きが期待できそうだ。

本記事は2025年12月31日時点で知りうる情報を元に作成しております。本記事、本記事に登場する情報元を利用してのいかなる損害等について出版社、取材・制作協力者は一切の責任を負いません。投資は自己責任において行ってください。